2015年7月27日以前の記事
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「子どもの読書離れ」は本当? 「実はもっと読んでる」の背景30年前と比べてどちらが読書家?

よく言われている「若者の読書離れ」は本当なのか? データや現場の声を聞いていくと、意外な事実が見えてきた。

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 「若者の読書離れ」が叫ばれるようになって久しい。しかし、出版社や図書館、学校関係者に「読書離れを感じるか」と聞いてみると、正反対の答えが返ってくる。「10代は本を読んでいる」というのだ。

 それを裏付けるデータもある。全国学校図書館協議会が11月に発表した調査によると、小学生4〜6年生の1カ月の平均読書冊数は11.3冊(17年5月時点)で、30年前の1987年の7.4冊から約1.5倍になっている。「過去1カ月で本を1冊以上読んだ」と答えた小学生は約95%に上る。

 中学生も同様の傾向で、87年の2.3冊に対して17年は4.5冊に増えている。読書離れどころか、むしろ子どもは読書をするようになっているのだ。


子どもは本を読んでいる(=全国学校図書館協議会)

 読書冊数の上昇傾向は2000年前後から始まった。背景にあるとされるのは「朝の読書活動」(朝読)だ。朝の時間帯に5〜15分程度の読書時間を設け、生徒に読書の習慣を持たせるという活動で、文部科学省が01年に「朝の読書活動の推進」方針を掲げたことから、多くの小中学校で導入された。

 こうした「朝読」需要もあって売り上げを伸ばす本も出てきた。学研の「白い本」シリーズを皮切りに、宝島社の「ひと駅ストーリー」シリーズ、河出書房新社の「5分シリーズ」など、“短時間で読める”を売りにしたショートショート本が、“○分もの”として1つのジャンルとなっている。

朝読需要効果で売り上げを伸ばしているシリーズも

 「5分シリーズ」の営業を担当する河出書房新社の鎌塚亮さんは「10代は本をよく読んでいる」と断言する。

 「文章や構成が10代にピッタリとハマる作品は市場にそう多くはないが、今の小中高生には物語を読む力があるので、読みたいと思える本を作れば絶対に読まれる。『源氏物語』のような大作や名作であっても、届け方を変えれば面白さを届けることができる」(鎌塚さん)

子どもは本を読んでいる。しかし大学生は……

 小中学生は本を読むようになっているが、上の世代はどうか。

 全国大学生活協同組合連合会の17年調査では、大学生の1日の平均読書時間は24.4分と過去最低を更新。「0分」と答えた人は49.1%に上った。読書時間が減った大きな原因は「時間のなさ」だ。学生生活、アルバイト、課外活動に追われるうちに、読書の時間が減っているという。アルバイトをしている大学生としていない大学生の読書時間にはおよそ8%の差が生まれていた。


大学生の読書時間は減っている(=全国大学生活協同組合連合会)

 「5分シリーズ」を立ち上げた、ディー・エヌ・エー(DeNA)子会社で投稿サイトを運営するエブリスタの松田昌子さんは、「時間のなさ」がヒットする本の傾向にも影響を与えていると指摘する。

 「忙しい日々を送る中で、読書は隙間時間で味わう娯楽になる。そうした状況の中で『必ず感動して泣ける』『必ずどんでん返しで驚く』という保証がついている作品が売れるようになっている」(松田さん)

 30年前よりも読書の習慣を持つようになった小中学生。そうして積みあがった読書習慣を、どうすれば持ち続けていられるのか。また、日々の中で失われた読書習慣はどのような作品であれば取り返せるのか。出版社に工夫が迫られている。

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