出資の対象は“倒産経験者” 独自の投資法で起業家支援:起業家支援で東北復興(3/3 ページ)
起業家支援で東北を盛り上げるMOKOTOの竹井智宏代表。常識に捉われない新しい投資方法を実践している。それが売り上げ連動型出資「シェアファンド」と“倒産経験のある起業家”を対象した「福活ファンド」である。
失敗経験ある人材を生かせ
さらに竹井氏は“倒産経験のある起業家”を対象した「福活ファンド」を福島銀行と展開している。「再チャレンジができる環境をつくることで、起業家を支援したい」という。
中小企業白書によると、会社を倒産させた後に再起する起業家は13%しかいない。そして、再起できない理由の大半が資金調達である。投資家や金融機関は倒産経験者に対して『また失敗するのでは?』というマイナスの印象を持つため、出資や融資を受けることが難しくなる。
しかし竹井氏は「失敗経験者こそ、活用すべき人材」と説明する。
「米国では、失敗(倒産)は貴重な経験として捉えられており、投資をする上でもプラス材料になる。実際、初めて起業する人よりも、失敗経験がある人の方が成功する確率は高いです。一度学んでますからね。しかし、日本では『失敗したら終わり』という風潮があり、失敗した人には厳しいのが現状です」
福活ファンドでは、福島県に本社を置くことを出資の条件としており、全国から起業家人材を呼び集める狙いがある。福島県は東日本大震災後、風評被害もあり、特に人材を集めにくい課題があった。起業家を呼び込むことで雇用を作り、復興と経済発展に貢献していく考えだ。
16年に募集を開始したところ、120人以上から応募があった。現在は5人に出資を決めている。第1号出資先となったは、01年にWebデザインツールを開発・販売する会社を設立し、09年に倒産を経験した荒井潤一氏。倒産後もタクシードライバーで生活費を稼ぎながら、空いた時間で新製品の開発を続けていたという。福活ファンドから出資を受けたことで、製品の本格的な販売に向けて動き出している。
「『福島に行けば、再チャレンジできる』という認識を広げていきたいですね。出資先は、近いうちに20人に拡大していく計画です。また今後は、東北大学との連携による大学発ベンチャーを生み出すために、事業プロデュースも実施していきます。地方経済を盛り上げるためには、やはり強い事業をたくさん創っていかなければなりません。そのために、志を持った起業家を支援していきます」
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