「不正だと自覚できない」 外国人技能実習生、3年で22人が“労災死”:過労死も
労災死した外国人技能実習生は3年間で22人。「労働者としての権利を知らないまま働かされているケースが多いため、不正が横行している」という。
労災死した外国人技能実習生(以下、実習生)は、3年間(2014〜16年度)で22人――。厚労省の調査でこのような実態が初めて明らかになった。
労災件数の年間平均は475件。労災による死亡と認定されたのは、14年度が8人、15年度が9人、16年度が5人の計22人で、そのうち1人は長時間労働による過労死だった。
実習生の数は14年が16万7641人、15年が19万2655人、16年が22万8589人となっており、3年間の労災死は10万人当たり平均3.7人となる。職種は、農業や建設業、製造業などに限定されているが、日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回る結果となった(日本の労災死は10万人当たり平均1.7人)。
外国人技能実習制度は、発展途上国の若者に日本企業での実務を通じて実践的な技術や技能・知識を学び、帰国後に母国の経済発展に役立てもらう国際貢献を目的とした公的制度で、1993年に創設された。
しかし実態は、企業が安価に労働力を補うために実習生を雇うケースも多い。また、給料未払いやパワハラ、長時間労働などが相次いで指摘されており、社会問題となっている。15年に日本で失踪した外国人技能実習生は5803人(日本新華僑報調べ)と報告されており、実習先の労働環境の劣悪さが原因とされている。
実習生の問題に詳しい国士舘大学の鈴木江理子教授は「労働者としての権利を知らないまま働かされているケースが多いため、不正が横行している」と説明。
「本来は、実習に入る前に座学があり、日本語の基礎や法的保護、業務の専門知識などを学ぶカリキュラムとなっている。しかし、企業が即戦力として早く働かせたいがために、十分な座学や安全教育を行わはないまま働かせるところもある。知識がないためケガをしてしまったり、長時間労働を強いられても不正だと自覚できない(声を上げられない)問題が生じている」(鈴木氏)
政府は実習生の相談窓口を設けたり、実地調査を強化するなど対策を講じているが「実習生の数は年々増えているので、現在の対応では不十分」(同)だと指摘している。
一方、人手不足が深刻化する業界にとって実習生が貴重な労働力となることも確かだ。昨年、同制度の対象職種に「介護」が新たに加わった。また、実習生でも実習期間中に介護福祉士の国家試験に合格すれば日本で働き続けることができるように制度を見直す方針だ。
コンサルティング事業などを展開する日本介護ベンチャー協会の代表理事、斉藤正行氏は「介護サービスを維持していく上では、外国人技能実習生の活用は必要不可欠。また、日本の介護技術を学んで母国で生かしてもらえるのなら、大きな意義がある」としている。
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