郊外型家電量販店の“空回り”:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
昨年末、普段はあまり行かない郊外の家電量販店に足を運んでみた。そこで見た店内の風景は、郊外型家電量販店の苦境を改めて感じさせるものだった。
ポイントシステムのてこ入れを
一時期、世界を席巻した日本の家電メーカーの技術革新が生み出した、さまざまな革新的新製品の追い風にうまく乗って成長を続けてきた家電量販店であるが、そのビジネスモデルは変わっていかざるを得ないだろう。仮に消費を喚起するような新製品が再び登場したとしても、これまでのやり方はもう使えない。時代が変わり、家電メーカーの国籍も多様化し、これまでのように、メーカーが国内シェア競争にしのぎを削るといった環境は、今後、想定できないからだ。
ご存じのように、家電販売チャネルのECシフトも着実に進行しており、今後、リアル店舗チェーンが新商品を低価格で提供することをまき餌にして、収益商材を買ってもらう、というモデル自体成立しない。こうなると店舗当たりの売り上げが下がってくるため、人口集積度が低い郊外店舗から徐々に淘汰が進んでいくことになる。時代は変わったのだ。
ただ今後、郊外店の淘汰が進んでいくといっても、当面、急激に家電マーケットが縮小するという見通しはないし、その存在意義も相応に維持されるだろう。EC、ネットショッピングへのシフトは続くことは間違いないが、皆が販売員の説明と設置等を不要とすることはないだろう。家電に関する情報格差は拡大しており、誰もがECで商品の選択や設置をスムーズに行えるわけではないからだ。一定の需要は残るため、地域上位店を一定量確保すれば十分存続は可能だと思う。ただ、生き残りのための戦略が、冒頭に紹介した店舗のような中途半端な非家電売場の併設というのは、どうにも。
そもそもの話をすれば、購買頻度が異なる家電製品と、食品や消耗品雑貨は、店舗内でのシナジーがあまりないことは、過去のさまざまな企業の取り組みで実証済みである。ざっくり言ってしまえば、家電量販店と食品スーパー、ドラッグストアが一緒に出店している共同店舗があるとしよう。食品スーパーやドラッグストアのように平日にでも日々の必需品補充のため立ち寄る店と、かたや、家族皆で話し合って買うかどうかを決めるため休日に訪れる家電量販とでは、店に行くタイミング、客層が違う。こうしたタイプの違う店の共同出店は、実際これまであまり良い結果を生んでいない。それだけ相性の良くない商品を、門外漢の家電量販が見よう見まねで提供したとしても、顧客にアピールすることは難しいだろう。
こうしたことを考えていると、いっそのこと、地域の食品スーパーやドラッグストアにポイントシステムごと提供して、家電大手のポイントを地域の連携店舗で、等価で使用できるように開放してしまえばいいと思う。購買頻度が異なるため共同出店にはシナジーがないとしても、ポイント利用の自由度は、時空を超えて顧客に利便性が提供できる。直接的な囲い込み効果は薄れるが、ポイントの利用価値は明らかに向上する(同じものを同等の価格で買うのなら、ポイントの使い勝手がいい方を選ぶ、という考え方)。
さらに言えば、ポイント制度というものは、顧客囲い込みのための販促ツールではない。ポイントという情報料を顧客にお支払いして、顧客購買履歴というビッグデータを収集し、マーケティングに反映させることが、本来の目的のはずなのだ。
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