飲食店の倒産件数、過去最多 理由は?:6年ぶりに増加
2017年の飲食店の倒産件数は707件で過去最多だった。「大手企業が客単価の低い業態を積極的に出店しているため、価格競争についていけない個人経営の飲食店が倒産している」という。
帝国データバンクの調査によると、2017年の飲食店の倒産件数は707件で過去最多だった。前年よりも150件増加(26.9%増)し、負債総額は359億1900万円(34.1%増)となった。
倒産件数は11年(688件)をピークに16年まで減少が続いていたが、6年ぶりに増加した。一方、負債総額は大型倒産が少なかったため、00年以降の18年間で5番目に小さい水準となっている。
倒産の原因は「販売不振」が最も多く、「倒産した飲食店の大半が個人経営などの小規模事業者」(帝国データバンク)だという。
外食ジャーナリストの中村芳平氏は「大手企業が客単価の低い業態を積極的に出店しているため、価格競争についていけない個人経営の飲食店が倒産している」と説明。
「例えば、塚田農場などを展開するエー・ピーカンパニーが単価の低い焼き鳥業態を積極的に出店したり、ワタミが『鳥メロ』でビールを199円、『ミライザカ』でジムビームハイボールを199円で販売するなど、デフレ圧力をかけている。2010年の時にも、三光マ一ケティングフーズが全品270円均一の『金の蔵Jr.』を出店するなど、価格競争を仕掛けたことで倒産件数が増加した」(中村氏)
倒産した飲食店は、居酒屋や焼き鳥屋、おでん、もつ焼屋、ダイニングバーなどを含む「酒場、ビヤホール」が133件で最も多かった。次いで「中華料理店、その他の東洋料理店」「西洋料理店」と続いた。
前年から増加したのは「酒場、ビヤホール」(36件増)、「バー、キャバレー」(27件増)、「西洋料理店」(25件増)、「日本料理店」(22件増)などで、「そば・うどん店」(6件減)と「すし店」(2件減)の2業態は減少した。
「焼き鳥屋、おでん屋、もつ焼き屋などの業態は、メイン客だった団塊の世代が70歳以上に突入し、(会社を)引退してしまったことも大きいが、ちょい飲みの仕掛け人である『日高屋』に流れている可能性もある」(中村氏)
中村氏によると、個人経営の飲食店が生き残るためには「大手とは価格競争で負けるので、徹底した品質戦略(産地にこだわるなど)で差別化するしかない」(同)という。
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