2018年の中国IT、家電メーカーが攻める:山谷剛史のミライチャイナ(3/3 ページ)
スマートシティーやモバイル決済、シェアサービスなどで一歩先を行く中国。今年は家電メーカーがITをけん引するようだ。現地に詳しい山谷氏のリポート。
各社がスマート機器の研究開発を強化
またアリババ、京東、小米は昨年スマートスピーカーをリリースしている。アリババの「天猫精霊」については当連載で紹介したが、これらの企業はスマートスピーカーで様々な機器をコントロールできるよう、スマートデバイスメーカーや、スマート家電メーカーの囲い込みを進めている。
京東はテンセントと協力関係を結んだことで、中国人に身近な微信(WeChat)ベースで対応スマート家電をコントロールできるようになるかもしれない。今年も中国政府の目標に向けて程度の差こそあれ意識し、対応するスマート機器を増やしていくだろう。
その中でも特に家電メーカーの動向には注目だ。最近、家電メーカーがスマート機器の研究開発を強化するというニュースを続々と聞くようになった。
家電メーカーの最大手のハイアール(Haier)は、コンシューマー向けでは引き続きスマートホーム向けの製品群「U-Home」に注力し、スマートホームを認知理解してもらおうとテレビドラマのシーンで活用するなど製品開発と並行して啓蒙活動を行った。
その一方で3カ年計画をなぞるように様々な規格制定に参加した。17年7月には中国が制定する「スマートシティー構築および居住区総合サービスプラットフォームの技術要求」に参与。また同月にスマート家電へのIoT無線技術「NB-IoT」のソリューションでハイアールとファーウェイと中国電信(チャイナテレコム)が提携を発表した。
また同社が主導する大規模個性化カスタマイズ手法「人単合一」が中国企業としてはじめてIEEEで承認され、国際舞台での存在感を高めた。この「人単合一」をベースとして、スマート製造クラウドプラットフォームを開発し、20数カ国の農業、電子工業、船舶、建築、装備工業などの産業、3万社がこのプラットフォームを提供しているという。
東芝の白物事業を買収した「美的」も
東芝の白物家電事業を買収したことで知られる大手白物家電メーカーの「美的」(Midea)は、家電を音声でコントロールできるアプリケーション「小美」を開発した。同社の13製品に対応し、家電向けの各種操作が音声でできるほか、製品の利用方法の紹介や、音楽再生にも対応しているという。また昨年10月に中国科学院と美的集団と米Qualcomm、スタンフォード大学などが提携し、オープンなスマート家電接続規格「Smart Home Appliance Connectivity Specification」(SHAC)を発表している。これにより、異なる種類のスマート家電同士の接続が可能となり、スマート家電単体を超えたつながった家電製品全体でのスマート化が実現するという。
工業用スマートロボットでは、美的は昨年アメリカのシリコンバレーに、人工知能やICやセンサーやスマートロボットを研究開発する「未来技術中心」(Emerging Technology Center、略称ETC)を建設し、人工知能つき家電製品2製品の開発に成功したという。
家電のほかには、美的は5カ年計画内の2015年には日本のロボット大手、安川電機と提携し、また2016年にロボット大手のドイツ・クーカを買収し開発力を高め、スマート物流用や医療用ロボットを開発し中国国内での実績を増やしている。
またエアコンなどで知られる大手家電メーカーのGREEも、スマートデバイス用製品の開発を進め、2017年のスマートデバイスの売り上げは2016年比で30倍近い大幅な伸びを示したという。
このように大手家電メーカーは、コンシューマー向けビジネス向けを問わずスマートデバイス開発に本腰となっている。3カ年計画で今年末が目標の「コア技術の確立」「世界的な企業を輩出」「世界シェア3割」「工場に導入」が実現できそうなのが分かってもらえたと思う。さらにアリババや、テンセントがついた京東が複雑に絡み合い、魅力的なスマート製品が続々と登場し激しい競争となる、そんな年になりそうだ。
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