マニュアル改革で離職率ダウン すかいらーくの戦略:増える外国人従業員対応の側面も
すかいらーくが紙中心だった業務マニュアルや手順書のデジタル化を進めている。品質向上だけでなく、従業員の定着率向上にもつながるという。
すかいらーくは2月5日、これまで紙中心だった業務マニュアルや手順書をデジタル化することで業務習熟の負担を軽減し、アルバイト定着率の向上を目指すと発表した。すでに2017年9月にはガスト全店に導入されており、今後は「バーミヤン」や「ジョナサン」など全ブランドに広げるという。
クルーと呼ばれるアルバイトの1年以内定着率を現状の約60%から70%へと引き上げることを目指す。
同社が導入を進めているのは、ベンチャー企業のスタディストが開発した「Teachme Biz」と呼ばれるマニュアル作成・共有サービス。スマホやタブレットだけで簡単にマニュアルの作成、配布、更新、管理が行えるほか、動画や写真を簡単に組み込むことができるのが特徴だ。すでに全ての店舗に導入されているタブレットだけでなく、従業員個人のスマホでも閲覧できるため、空き時間に勉強できるのもメリットだ。
従来、こういったマニュアルはテキスト中心だったが、働き始めたクルーには理解が難しく感じられることもあり、早期離職につながっていた。実際、クルーの3カ月未満退職率は、15年から17年にかけて23〜25%で推移している。同社の金谷実執行役員は「ガストなどのファミリーレストランの多くはメニュー数や作業手順の改訂も多く、オペレーションの難易度が高い。定着率を上げるトレーニングツールとして活用したい」と意気込む。
増える外国人店員対策
Teachme Bizは中国語など4カ国後に対応しており、近年増加を続ける外国人従業員をトレーニングする負担軽減も狙える。スタディストの庄司啓太郎取締役COOは「もはや、『こんがり焼いて』という指示では通じない。非言語化されたコミュニケーションツールが求められている」と説明する。
すかいらーくでは外国人従業員の在籍数が16年の1411人から17年には1813人に増加。今後も毎年2〜3割ずつ増えるとみている。従業員の全体数でみると約1割だが「深夜や年末年始にしっかり働いてくれる貴重な戦力」(金谷氏)であり、外国人従業員への指導は重要な課題だ。
提供する商品の質向上も狙う
このサービスを導入する別の狙いは、商品の品質向上だ。外食産業全体でみると、店舗で働く従業員は日々の業務が忙しく、店舗に備え付けらえれた紙のマニュアルを熟読する時間をなかなかとることができない。そのため、新商品の導入時には、作業マニュアル通りに調理されず、質の低い商品を提供してしまうこともある。「悪いサービスを受けると、ファンが離れてしまう」(金谷氏)というのは避けたいところだ。
Teachme Bizは従業員の閲覧動向も分析できる。それを見ると、いまのところ店舗の調理講習会前に急激に閲覧回数が増えているが、今後は“当日のぶっつけ本番”を回避することができるのではないかと同社は期待している。
「ITにアレルギーのある社員は少なからず存在する」(金谷氏)というように、すかいらーくグループの現場で課題が残る。今回の取り組みによって、従業員の定着率に変化があるのか、注目される。
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