「トップレス営業マン」と呼ばれた私が、脱社畜に成功した方法:常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)
私は社畜だった。接待、宴会芸、希望外の異動、出向、転勤、過労、鬱……。社畜らしいことは一通りやった。そんな社畜人生から抜け出すことができた理由は……。
「仕事の成果」と「副業」が自分を変えた
ここからが本題だ。私は脱社畜を何度も考えた。いや、同じ社畜でもよりよい厩舎(きゅうしゃ)を求めたのだった。異動や転職活動などを何度も試みた。
正攻法のようなやり方だが、注意が必要だ。というのも、社畜をやめたい、よりよい環境で働きたいと思っている時に限って、自信のなさが顔にも出て、買い叩かれるのだ。
特に、「会社イヤイヤ期」に利用した人材紹介会社からは「給料をもう150万円くらい下げられないか?」と言われ、引いてしまった。向こうはなんとかマッチングさせて紹介料をもらおうとする。なかなかタチが悪い。
では、どうすればいいのか。まず、安易に転職する前に小さなものでもいいので、何か成功体験を作ることが大事だ。これが脱社畜の第一歩だ。「名刺代わりになる仕事」を作ると、周囲の見る目が変わるので、少しだけ前向きになれるし、自信も付く。転職や異動の際も自分のことを説明しやすくなる。
私もいくつかの大型受注や、ヒット施策などがあり、それで周りの見る目が変化した。会社にいやすくなったし、転職先や異動先に自分のことを説明しやすくなった。これで一気に居心地がアップしたのだ(結果が出てきたことで、宴会芸などで苦しめられることも徐々になくなっていった)。
「それができないから困っているんだよ」と言われそうだが、よりよい条件を手にいれるためには、まずは今の仕事で成果を出すというのが王道であり、近道なのだ。
私が社畜から抜け出せたのは、副業を始めたことも大きい。ライター業、講師業を務め、稼ぐ自信が付き、いざとなったら辞めるという選択肢を認識することができたのだった。少なくとも精神的には少し楽になった。その後、副業のライター業、講師業が本業となっていき、次の道が開けたのだった。
そう。「自ら副業を創り出し、副業によって自らを変えた」というわけだ。
このように、安易に会社を辞めようとするとますます買い叩かれ、飼いならされる。それなら、社畜なりに成果を出すこと、さらには次の生き方の実験(副業)をすること。これが私なりの勝利の方程式だ。
それにしても、社畜時代のことを書いたら、ツラくなってきた。あの頃よりは幸せだと、ちょっとだけ安心した。もっとも、二度とできない(したくもないが)かけがえのない日々だったのだけど。ぜひ、あなたの社畜脱出プランも教えてほしい。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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