2015年7月27日以前の記事
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アマゾン・ゴーの出現は既存小売にとってピンチなのか?小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

レジのないコンビニ「アマゾン・ゴー」が一般客向けにオープンした。利便性が高いなどと評判が良いが、一方で既存の小売業にとっては脅威になるのは事実だ。ただ、すべてが取って代わられるかと言えば、決してそうとも言い難い。

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 流通の世界で今進行しつつある変化は、リアル店舗がECにシフトしていくといった、チャネルシフトが本質ではない。ビッグデータのシェア獲得競争の時代を経て、マスマーケティング(広告宣伝による一方的な告知=効果検証不能)がデータベースマーケティング(ビッグデータに基づいた消費者との双方向のコミュニケーション=効果検証可能)に変わっていく過渡期だということなのだ。これまでは、購買履歴データを集めても、その分析がうまくいかず期待する成果にはつながってこなかったため、既存小売業の大半はデータベースマーケティングには懐疑的な態度だった。ただ、これからはAIがさらに進化することで、急速に成果を生むようになるはずである。

 こうした情報武装は、決してEC企業の専売特許ではないはずだ。先ほどの統計にもあったが、まだ今ならリアル店舗を中心とした既存小売業の方が、ビッグデータの総量は多い。こうしたビッグデータを統合して、マーケティングを構築すれば、アマゾンにも対抗可能なインフラを作ることもできる。

 ポイントカード、電子マネー、クレジットカードなどの普及と相互連携により、リアル小売業でもビッグデータ(個人認識可能な購買履歴データ)収集の土台は既に整っているからだ。こうしたビッグデータのプラットフォーマーが、近いうちに現れるだろう。

 ただ、それは既知の大企業ではなく、異業種から参入するベンチャー企業のような気がする。われわれはまだ知らないが、きっとどこかで準備中の企業が、すい星のごとく名乗りを上げるのだろう。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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