鳥貴族、上期の好業績を素直に喜べる?:値上げの影響で既存店は頭打ち
鳥貴族が3月9日、第2四半期決算を発表した。好業績の一方、既存店の売り上げ高が伸び悩んだ。絶好調にみえる鳥貴族に死角はないのだろうか。
鳥貴族は3月9日、2018年7月期の第2四半期決算(非連結)を発表した。売上高は165億円(前年同期比18.5%増)、営業利益は8億9100万円(同51%増)だった。
既存店の売上高は前年同期比99.9%にとどまった。同社発表によると原因は関東地方の記録的な長雨や豪雪、17年10月に2週続けて上陸した台風、メニューの値上げによるものだという。売上高を押し上げたのは新規出店による店舗数の増加だ。
18年7月期の通期業績予想に変更はないとのことだが、死角はないのだろうか。
鳥貴族は17年10月から一律280円(税抜き、以下同)だったフードとドリンクの価格を298円に値上げした。28年間ぶりの価格改定だった。原材料や人件費などの増加をコスト削減で補ってきたが、企業努力の限界を超えていた。
価格上昇によって既存店の売上高にマイナス3%の影響が発生するが、値上げ分と既存店の成長でプラス7%となる。つまり、売上高はプラス4%になるので問題はないと同社では考えていた。
しかし、18年になってから苦戦が続いている。3月7日に発表された月次報告によると、既存店の売上高は前年同月比で1月は96.4%、2月には94.0%まで落ち込んだ。客数の落ち込みはもっと厳しい状況になっている。客数は前年同月比で1月は93.8%、2月は92.0%だった。同社の広報担当者は「値上げの影響もあるが、関東エリアで鳥料理を出す競合店が増えていることや大雪など複合的な要因によるもの」と説明する。
この状況に対して市場は厳しい評価を下している。月次報告が発表された翌日の3月8日、同社の株価は終値ベースで前日比8%安の2824円まで落ち込んだ。4000円近付近にまで上昇していた昨年の勢いは完全に失われることになった。
厳しさを増す競争環境
同業態店が増えていることで競争環境は厳しくなってきている。モンテローザが運営する「豊後高田どり酒場」は全品280円を維持している。DINAMIX(ダイナミクス)が運営する「鳥二郎」に至っては全品270円だ。広報担当者は「競合は脅威ではない。サービスを磨くことで差別化できる。当社は安かろう悪かろうではない」と説明するが、既存店への影響がないとはいえないだろう。
鳥貴族はここ10年で急成長してきた。10年7月期の売上高は約56億円、店舗数は177店だった。17年7月期には売上高が約293億円、店舗数は567店にまで増えた。17年に発表した新中期経営計画では21年7月期までに店舗数を1000店にまで増やすという強気の目標を掲げる。これまでの業績や出店ペースからは問題なく達成できるように見える。だが、課題となる既存店対策をおろそかにしては今後の成長にブレーキがかかる可能性は否定できないだろう。
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