【一問一答】ピーチ・バニラ統合 「生き残り」賭けた3社の思惑とは:ANA・ピーチ・バニラのトップが語る(1/2 ページ)
ANAホールディングスが傘下のLCCであるPeach・Aviationとバニラ・エアの経営統合を発表。記者会見で3社のトップが語った統合の狙いと背景は。また、統合で実現する「中距離LCC」の構想とは?
ANAホールディングス(以下、ANA)は3月22日、傘下の格安航空会社(LCC)国内2位のPeach・Aviation(ピーチ)と同3位のバニラ・エアを経営統合すると発表した。2018年下半期から、約1年半をかけてピーチにバニラの事業を移管し、20年度には売上高1500億円、営業利益150億円を目指す。
同日の統合発表会見には、ANAの片野坂真哉社長、ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)、バニラの五島勝也社長が登壇し、狙いや背景を語った。なぜピーチとバニラはこのタイミングで統合となったのか。LCCの市場環境はどのようになっているのか。中型機を使った「中距離LCC」の構想とは?
ピーチ・バニラ統合のビジョン
――統合がこのタイミングになったのはなぜか。
ANA片野坂社長: もともと「2社を統合しないのか」という質問が多く、検討はずっとしていた。統合への思いが強まったのは、17年2月に行ったピーチの子会社化。さらに、ピーチ井上CEOから「海外LCCに活気がある。中距離LCCも含め、20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてどんどん国内に乗り入れてくるだろう」という話を聞き刺激を受けた。今がベストのタイミングと判断した17年秋ごろに両社に話をぶつけたところ、同じ思いを抱いていた。
今は、両社ともに業績が堅調で、訪日外国人の潮流が強く、地方創生で地方を活気づけたい機運が盛り上がっている。路線の重なりも3つと少なく、機材や人材が足されることでスケールメリットが生まれる。
――ピーチを基盤にした理由は? また、統合の具体的な方針は。
ANA片野坂社長: ピーチとバニラを比較し、知名度など総合的に考えてピーチブランドを基盤にしていくのがよいと判断した。ピーチとバニラ、両方の職場を見学したが、それぞれ文化が違う。ピーチは多様性を感じる。ビジネス的には、Webサイトを見ても、Instagram活用のマーケティングなど、ANAとは全く違う新機軸を入れている。
統合はバニラからピーチへの事業譲渡の方向で考えているが、どのような形で進めるかは検討中。資本面については、ピーチの他出資企業からは理解を得ている。統合とは直接関係ないが、4月にピーチの株式10%強を香港First Eastern Aviation Holdingsから113億円で取得し、資本構成は77.9%となる。
――統合でピーチの独自性は失われないのか。“ANA色”が強くはならないのか。
ピーチ井上CEO: 独自性が失われることはない。ピーチはブランドがある程度確立していて、顧客も女性6割、20〜30代が56%ほどとANAとは異なる層に利用していただいている。ピーチがANAと同じようなブランディングに転換すれば、その層には利用してもらえなくなる。独自価値を保つことが、ANAグループ全体の企業価値に寄与すると考えている。
――バニラが統合されることへの気持ちは。また、統合後のピーチにバニラの強みがどう生きていくのか。
バニラ五島社長: この統合を非常に前向きに捉えている。バニラは成田をベースにして、「成田LCCナンバーワン」を目指していた。しかし国内や外国のLCCにより、競争が激化していた。統合することで、お互いの強みを生かした「アジアのリーディングLCC」を目指せるという、明るく高いモチベーションを抱いている。
バニラの強みは、首都圏を中心とするネットワークを築いていることと、利用者700万人の顧客基盤。ピーチとは重複する路線も3つほどとそれほど多くないため、ネットワークの強みを生かしていける。
ピーチ井上CEO: バニラの首都圏機能は大事にして引き継ぎをさせていただく。ピーチは本社が大阪にあるが、首都圏機能を効率化するために、本社機能を一部東京に移すことも視野に入れている。今後、中距離LCCを展開する上で、さらなる増員が必要になる。そのための採用競争力担保に向けても、一部機能が首都圏にあるのはいいことかもしれないと考えている。
バニラと結集することで日本全国で拠点がそろい、訪日外国人のお客さまを日本各地に案内するような路線網をスピードをもって構築できるようになった。今後の路線については、お客さまの利便性、機材の効率、就航都市との協力関係など総合で決めていく。
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