2015年7月27日以前の記事
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NHKが地上波にAIアナウンサー「ヨミ子」起用 何を読む?みんなで育てる“新人”

NHKが4月から、ニュース番組「ニュースチェック11」に“AI(人工知能)アナウンサー”「ニュースのヨミ子」を起用する。今後1年間にわたり、ネット上で話題のニュースを報じていく。地上波ニュースの注目度を高める狙い。

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 日本放送協会(NHK)は3月26日、4月からニュース番組「ニュースチェック11」(毎週月〜金曜日、午後11時10分〜)に“AI(人工知能)アナウンサー”を起用すると発表した。名前は「ニュースのヨミ子」で、NHK放送技術研究所が平昌(ピョンチャン)五輪向けに開発した技術「ロボット実況」がベースになっている。キャラクターとスタジオの映像を合成する形で登場させ、今後1年間にわたってネット上で話題のニュースを報じていくという。

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NHKの「ニュースチェック11」に登場する「ニュースのヨミ子」

「コップのフチ子さん」タナカカツキ氏がデザインを担当

 キャラクター「コップのフチ子さん」を手掛けたクリエイター、タナカカツキ氏がデザインを担当した。機械学習で原稿の読み方をマスターし、合成音声によって発話する仕組みだ。AI技術を活用した架空のアナウンサーが、NHKの地上波ニュースに登場するのは同社初という。

 「ヨミ子」はまず4月2日に顔見せとして出演し、4日から毎週水曜日に登場する予定。当面は5分程度と短いコーナーを受け持つ予定だが、ゆくゆくは長尾香里キャスターや青井実キャスターとの掛け合いができるよう、音声認識技術と会話技術を改善していくという。

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NHKの“AIアナウンサー”起用は初めてだ

 現時点では氏名は非公表だが、ある現役アナウンサーが“教育担当者”に就任し、多岐にわたる音声データを機械学習向けに提供していくという。合成音声に特有のアクセントや話し方のくせを修正し、プロのアナウンサーにふさわしい原稿読みを覚えさせる狙いだ。

 「ニュースチェック11」の公式Webサイトには視聴者からの連絡窓口も設け、課題点や感想などの投稿を受け付ける。届いた意見の一部は機械学習に使用し、「ヨミ子」の成長につなげていくという。

多くの人に地上波ニュースを楽しんでほしい

 報道局ネットワーク報道部の熊田安伸専任部長は、“AIアナウンサー”を起用する理由を「より多くの人に地上波ニュースに親しんでもらうため」と説明。「以前からTwitterと連動した番組配信を行うなど、先進的な取り組みを行っているので『ニュースチェック11』に出演させることを決めた」という。

 「AIアナウンサーが進歩すると、人間のアナウンサーがクリエイティブな役割を担い、AIは速報を担当するなどの役割分担が可能になる。忙しくなりがちなアナウンサーの負担を軽減し、“働き方改革”にもつなげられそうだ」(熊田専任部長)という。

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進歩すれば“働き方改革”にも応用できるという

 米GoogleのAI「Googleアシスタント」や、米Amazon.comのAI「Amazon Alexa」とも連携する。Android端末のほか、スマートスピーカー「Google Home」「Amazon Echo」シリーズに向かって「ヨミ子につなげて」と話しかけると、「社会、科学文化、ビジネス、どれがいい?」などと応答。ジャンルを選択すると、最新のニュースを自動的に読み上げる。

 熊田専任部長は「現在スマートスピーカーでNHKのニュースを聞こうとすると、直近のニュースをまとめたラジオ番組が流れる仕組みになっており、興味のあるジャンルを選ぶことはできなかった」と背景を説明。

 「この課題を改善した点も大きなメリットだ。今後はジャンルだけでなく、『森友学園』『仮想通貨』といったキーワード単位でニュースを選べるよう改良していく」という。

皆さんの手で育てて

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NHKの熊田安伸専任部長

 また「ヨミ子」には、「テレビに出ていない時はスマホの中に住んでいる」という設定も採用。放送時間外に、AR(拡張現実)上のキャクラターとしてスマホアプリ上に登場する企画も始める予定だ。

 具体的には、カメラアプリ内の風景や人物の近くに「ヨミ子」を登場させ、一緒に写真を撮れるサービスなどの展開を視野に入れている。

 熊田専任部長は「『ヨミ子』はまだ新人アナ。今後は真のAIアナウンサーに成長させたい。今回の取り組みで成果が得られれば、地方局などへの導入も検討する予定だ。視聴者向けの連絡窓口にどんどん意見を寄せて、皆さんの手で育ててほしい」と期待を込めた。

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アプリ内に映る熊田専任部長と「ヨミ子」

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