「定期的な異動が生産性を落としている」説は本当か:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
新年度がスタートした。新たな部署に配属されて、「うまくやっていけるかな」と不安を感じている人も多いのでは。4月に「定期人事異動」を導入しいている企業は多いが、このシステムは本当に効率的なのか。ひょっとしたら生産性を落としているかもしれない。
意味のない人事異動を止めるべし
部下を僻地に飛ばして忠誠心を試す、という思想は江戸時代の参勤交代のなかにも見ることができる。日本人がここまで人事に執着するのは、戦国時代から脈々と続く「統治術」の名残であることは明らかだ。
バカバカしいという言葉が聞こえそうだが、だったらなぜ我々は僻地への赴任の命を受けることを、「島流し」などという古代から続く流刑と重ねているのか。
昔を引きずるということでいえば、先の外国人経営者と話をしていて、もうひとつ興味深い質問を受けた。
「どうして日本の経営者って戦国武将の話が好きなのですか? 信長に学ぶ経営術とか、みんな自分を武将に重ねているのですか?」
先人の知恵を大切にするというのは悪いことではないが、日本人同士で刀で殺し合っていた時代につくられたマネジメントが、男女や外国人が同じように働き、「多様性が大事だ」なんて言われる現代日本では活用できないのではというのだ。
ご指摘はごもっともだが、我々はほんの少し前、本気で竹槍でB29に挑んだ民族である。この現実を受け入れるのにもまだ少し時間がかかる。
日本の生産性が上がるのは、まだまだ先のことのようだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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