真面目な組織人ほど「うそ」や「不正」に走りやすい理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
『ワイドナショー』でダウンタウンの松本人志さんが、土俵の女人禁制問題について語った。「女性の方は土俵から降りてください」とアナウンスした行司について、「真面目がゆえに、こうなっちゃってるんですよ」とコメント。ネット上でも話題になっているが、筆者の窪田氏はどのように感じているのかというと……。
相撲協会は「考えることを放棄した」
ネット上では、責任を逃れるためのうそだと厳しく批判されているが、筆者はこれも真面目な組織人がゆえの「陳腐な悪」に過ぎないと思っている。
あれが巡業部長の責任ということになれば、相撲協会は何をしているんだ、ということになりまたしても大騒ぎになる。しかし、「私も驚いたんですけど、若い行司がどうもテンパっちゃって」で済ませておけば、「相撲協会は女性差別などしません。再発防止に務めます」みたいなコメントでどうにかお茶をにごすことができる。
つまり、トイレ発言は、自身の保身もさることながら、不祥事続きの相撲協会がこれ以上叩かれないように、という「組織防衛」の意図があったことが容易に想像できるのだ。
「意図」と聞くと、ちゃんと考えているじゃないかと思うかもしれないが、頭を働かせているのは「組織を守る」という一点のみで、世の中の人々に対して誠実な説明なのか、スケープゴートにされた行司はどんな思いなのか、など最も大事なところに関してはゴソッと思考が抜けているのだ。
このように相撲協会を「考えることを放棄した組織」だととらえると、最近の一連の騒動をすべてクリアに読み解くこときる。
3横綱が密室で、メキメキと頭角をあらわしてきた若手をリンチした。殴られる理由も説教される理由もない被害者の声に耳を傾ければ、横綱たちの組織犯罪に対して、徹底的な調査をするのが健全な組織だが、ご存じのように、お手盛りの第三者調査でサクッと幕引きをした。
そこに対して納得いかないので、身をもって異を唱えたのが、貴乃花親方だったが、「理事なのに協会に協力しないとは組織人失格」「何度も家を訪ねたが返事がない」など本筋ではない部分を袋叩きにして、しまいには弟子の不祥事にかこつけて完全にスポイルした。
そう聞くと、八角理事長やら相撲協会理事たちを悪人のように断罪しているように聞こえるかもしれないが、これもアイヒマンとまったく同じである。
「相撲ジャーナリスト」を名乗る方たちや、相撲記者クラブ在籍ウン十年みたいな評論家のオジサンたちが擁護するように、彼らは相撲界の発展を心から願い、相撲協会という組織に尽くそうとしている真面目な組織人だ。
だからこそ、「横綱は品行方正な人格者」という組織内論理に盲従して思考が停止してしまうのである。なにも考えていないので、一般社会からすると耳を疑うような言動も平気で行う。臭いものにフタをしているようにしか見えない、ずさんな対応もしれっとできてしまうのだ。
関連記事
- 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 「551蓬莱の豚まん」が新幹線で食べられなくなる日
新大阪駅で「551蓬莱の豚まん」を買ったことがある人も多いのでは。新幹線の車内でビールと豚まんを食した人もいるだろうが、こうした行為が禁止されるかもしれない。どういうことかというと……。 - 大東建託が「ブラック企業」と呼ばれそうな、これだけの理由
電通、NHK、ヤマト運輸など「ブラック企業」のそしりを受ける大企業が後を絶たないが、ここにきて誰もが名を知る有名企業がその一群に加わるかもしれない。賃貸住宅最大手の「大東建託」だ。なぜこの会社がブラック企業の仲間入りするかもしれないかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.