ゴキブリ退治の最新トレンドが、ヤバい未来につながる理由:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
ゴキブリ用殺虫剤「コックローチ」が話題になった。パッケージにゴキブリのイラストのないモノを販売したところ、消費者に好評だったという。「めでたし、めでたし」と言いたいところだが、筆者の窪田氏はある懸念を抱いている。どういうことかというと……。
先日、キンチョーでおなじみの大日本除虫菊のゴキブリ用殺虫剤「コックローチ」のなかで、パッケージに「ゴキブリ」のイラストがなくなるバーションを販売したら、えらく好評だというニュースがあった。
確かに、世の中には、ゴキブリの姿を見るだけで恐怖でパニックになる人も多くいる。そういう方たちからすると、ゴキブリ退治のための商品にゴキブリの絵を付けるなど言語道断だ。実際、ネット上には「ようやく気付いてくれたか」という意見も散見される。
このニュースからも分かるように、最近のゴキブリ駆除のトレンドは、いかにして「ゴキブリ感」を消すかがキモとなっている。
その代表が、業界最大手のアース製薬が2017年2月、「ゴキブリ退治の進化版」として発売してから人気となっている「ゴキプッシュプロ」だ。
これは同社が実施した「印象調査」で、「ゴキブリは死骸であってもその姿を見たくない」という回答が多いことから発売されたもので、「すき間に潜むゴキブリ・トコジラミ 見ないで退治!」とパッケージにデカデカとうたわれていることからも分かるように、シュッとスプレーするだけで、ゴキブリ本体をまったく目にすることなく駆除できるというものだ。少し前にヒットしたフマキラーの「ゴキブリワンプッシュ」も同じ使い方だが、こちらは薬剤を浴びたゴキブリが興奮して、物陰からあらわれて死ぬという「追い出し効果」がある。それに対して「ゴキプッシュプロ」の場合、姿をあらわす間もなく物陰でそのまま死ぬのだ。
「素晴らしい! メーカーさん、そういうのじゃんじゃん開発してよ」というゴキブリ嫌いの方たちからの拍手喝采が聞こえてきそうだが、個人的にはこのトレンドはかなりヤバいと危惧している。
「ゴキブリの姿を見ずに駆除」と聞くと、AIスピーカーのように「面倒なことは進歩したテクノロジーが代わりにやってくれます」みたいな明るい未来を連想する人も多いだろうが、この件に関してはそうとも言い難い。このコンセプトの製品が主流になると、メーカー、消費者双方にとってもかなりマズい事態を招く恐れがあるからだ。
理由としては2つある。
関連記事
- 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 「551蓬莱の豚まん」が新幹線で食べられなくなる日
新大阪駅で「551蓬莱の豚まん」を買ったことがある人も多いのでは。新幹線の車内でビールと豚まんを食した人もいるだろうが、こうした行為が禁止されるかもしれない。どういうことかというと……。 - 大東建託が「ブラック企業」と呼ばれそうな、これだけの理由
電通、NHK、ヤマト運輸など「ブラック企業」のそしりを受ける大企業が後を絶たないが、ここにきて誰もが名を知る有名企業がその一群に加わるかもしれない。賃貸住宅最大手の「大東建託」だ。なぜこの会社がブラック企業の仲間入りするかもしれないかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.