「小さな妥協で大きな成果を」――SB孫社長がSprint合併を受け入れたワケ:米携帯市場の首位目指す
ソフトバンクグループの孫正義社長が、傘下で米携帯市場4位のSprintと同3位のT-Mobile USの合併にコメント。「大きな成果を得るために、小さな妥協をした」という。今後は上位2社に大規模な競争を仕掛けるという。
「恥をかくことを受け入れた。大きな成果を得るために、小さな妥協をした」――。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義社長は、5月9日に開いた決算説明会でこう語った。
SBGは4月30日、傘下で米携帯市場4位のSprintと同3位のT-Mobile USを2019年をめどに合併すると発表。過去にも2度交渉を行ったが、いずれも破談に終わっており、“3度目の正直”を果たした形だ。合併後は両社の強みを組み合わせて通信の高品質化を図るほか、5G(第5世代移動体通信技術)の商用化を目指すという。
SBGは経営権を手放す
株式交換によって合併し、持ち株比率はT-Mobile USの親会社、独Deutsche Telekomが41.7%、SBGが27.4%となる。合併後の新会社はSBGの持ち分法適用会社となる予定。新会社のCEO(最高経営責任者)にはT-Mobile USのジョン・レジャーCEOが就任し、SBGは経営権を手放す。
17年11月に2度目の交渉が破談に終わった際、孫社長は「同等の経営権を持てなかったため」と理由を説明。「交渉は失敗したが、晴れやかな気持ちだ」と語っていたが、どんな心境の変化があったのだろうか。
孫社長が意見を変えたワケ
孫社長は「両社のシナジーによって通信の品質・マーケティング力・バックオフィスがより充実し、米携帯市場首位のVerizon Communicationsや2位のAT&Tを抜ける可能性が出てきた。Sprintの株式価値がこれから高まり、莫大な利益をもたらすと考えたため」と理由を説明する。
SBGが戦略的持ち株会社として各業界トップクラスの事業会社を傘下に持つ「群戦略」や、テクノロジー分野に投資する10兆円規模のファンド「Softbank Vision Fund」に関心が移ったことも理由の1つという。「大きな成果のために、こだわりを飲み込んだ。私は大人になった」と孫社長は笑う。
「『Sprintの経営権をこれからも持ち続ける』と話した舌の根も乾かぬうちに意見を変えたことは、ある意味恥ずかしい。だが、より広い視点で見ると、これは正しい判断だ」(孫社長)
米携帯市場の首位目指す
新会社は設立後、3年間で約400億ドル(約4.4兆円)の設備投資を行い、上位2社に大規模な競争を仕掛ける方針だ。「経済的規模とネットワークのキャパシティーを生かし、低価格かつ高付加価値の通信サービスを提供していきたい」(孫社長)という。
カスタマーサービスや地方の店舗網を充実させて300万人の新規雇用を生み出し、米国に約55兆円の経済成長をもたらす試算もあるという。
孫社長は「米国が最も重要な市場だというのは取締役会の共通見解で、今回の統合も全会一致で決議した。名よりも実を取るための施策で、逃げたわけではない」と強調した。
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