西城秀樹さんの訃報を聞いて、 “Webおくりびと”の言動を考える:常見陽平のサラリーマン研究所(3/3 ページ)
著名人が亡くなると、気になることがある。Web上で、著名人のことをあれこれ書く人たちのことである。ひたすら悲しみをつづったり、思い出を書いたり、うんちくを披露したり。筆者の常見氏はこうした発言に異論を唱えているわけではないが、「何かが足りない」と感じている。その何かとは……。
いま求められるのは「本音の追悼」
西城秀樹さんの訃報を受けて、数々の追悼メッセージがあったが、個人的にはヘビーメタル評論家、いや音楽評論家の「セーソク」こと伊藤政則さんのコメントが心にしみた。
「『沢田研二さんがミック・ジャガーに入れ込んでいたから僕はロッド・スチュアートを目指した』と少年のような笑顔で語っていた西城秀樹さんの姿が忘れられない。数年前に実現した対談で彼の魂に宿るロックへの熱い思いはまさに火の玉となって僕を呑み込んでいった…ご冥福をお祈りいたします」(伊藤政則)
西城秀樹さん自身も「真似していました」と語っているのが美しい。だから、Webおくりびとたちに限らず、「故人の影響を受けた」ことをもっと告白すべきではないか。
Web社会は広がっているので、今後もWebおくりびとは活躍するのだろう。Wikipediaの速攻更新はともかく、どのような形で追悼するのかといった方法はいろいろあっていい。いま求められるのは、本音の追悼ではないか。それは別に美しい話でなくても構わないのだ。
最後に。秀樹さん、ありがとうございました。安らかに眠ってください。リスペクトの意味をこめて、秀樹さんと同じ髪型にすることにしました。筆者なりの弔いの表現です。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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