ファンケルの「アクティブシニア社員」は会社に何をもたらすのか?:いつまでも働き続けたい(4/4 ページ)
労働人口が減少する日本において、いち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業が出てきている。化粧品と健康食品メーカーのファンケルでは65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という制度を打ち出した。そこで活躍する社員に実際の話を聞いた。
働き続ける原動力は「会社が好き」という気持ち
いち早くアクティブシニア社員になった桧山さんのもとには、「もうすぐ65歳になるけれど、働き続けようかどうしようか迷っている」という相談も寄せられる。そのときは「仕事が好きなら、残れば?」とアドバイスしているそうだ。
桧山さん自身も、他にアクティブシニア社員として働き続けている人も、生活のために仕方なくということではなく、「ファンケルが好きだから続けている」という人が多いという。
「今60代の人たちは、80年代から90年代前半に入った人が多いです。その当時はまだ会社が伸び盛りのときで、今ほど大きくなかったんですよね。皆が同じフロアにいて、自然に情報共有ができるような感じでした。まだ池森さん(創業者の池森賢二会長)が現場にいて、『お客さまがこうおっしゃっていた』と伝えると、すぐに運用を変えていける、そんな時代でした。私たちはそういうファンケルの姿勢を見てきているし、経営理念の中で『人間大好き企業』と言っている通り、私たち社員も大事にされてきた実感があります。だから『ファンケルが好き』という社員が多いのだと思います」(桧山さん)
シニア社員の雇用に悩みを抱える企業にとって、桧山さんとファンケルとの関係は理想的すぎてあまり参考にならないかもしれない。だが、「会社は私たちを大事にしてくれる」という実感や、年齢や立場を超えて率直にコミュニケーションができる風土が、長く働いて貢献したいという気持ちを引き出している点は、大いに見習うべきところではないだろうか。
著者プロフィール
やつづかえり(ERI YATSUZUKA)
ライター、編集者
コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。13年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するWebメディア『My Desk and Team』開始。女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜18年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)などで働き方、組織などをテーマに執筆中。
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