1000室の豪華客船が「ホテル」に JTBが横浜で初、五輪限定で:2泊で7〜60万円(1/3 ページ)
JTBは、2020年の東京オリンピック期間中に大型クルーズ船を宿泊施設として活用する。利用するのは米Princess Cruisesの「サン・プリンセス」。試合のパブリックビューイングなどのイベントも適宜開催する。
JTBは6月25日、2020年東京オリンピック期間中に大型クルーズ船を宿泊施設として活用すると発表した。利用するのは米Princess Cruisesの「サン・プリンセス」。全長261メートル・7万7000トンと大型で、1011部屋の客室とレストラン3店、プール3カ所、ジャグジー5カ所を備える豪華客船だ。20年7月23日〜8月9日(五輪開幕式の前日〜閉幕式当日)にかけて横浜市の山下ふ頭に係留し、2泊3日単位で提供する。
価格は7〜60万円
料金は2泊3日で1人7万円(一般客室)〜60万円(スイート)程度を想定。船内では、試合のパブリックビューイングなどのイベントを適宜開催する。食事代は料金に含まれており、「好きな食べ物を、好きな時に、好きなだけ楽しんでほしい」(Princess Cruises日本法人の担当者)という。プール、ジャグジー、スポーツコーナー、各種ショーなども無料で楽しめる。エステや美容院、一部有料レストランなどの利用は別途料金が必要。
ホテルとして使う予定の「サン・プリンセス」は現在運航を休止し、数百万ドルを投じて改装工事中。そのため同日行われた発表会では、構造が似た客船「ダイヤモンド・プリンセス」を披露、高級感あふれる外観・内装に報道陣からは感嘆のため息が漏れていた。
観光客の受け入れ先として需要に対応
大会期間中に都心の宿泊需要が増大し、既存の宿泊施設が満員になることを防ぐための施策。主なターゲットは日本人客で、訪日外国人客の利用も一部見込む。「長期係留する客船に泊まったことがない層に訴求し、特別感を届けたい」とJTBの鈴木章敬 法人営業本部事業推進担当部長は説明する。
JTBの高橋広行社長によると、「旅行事業者が大型客船をホテルとして提供するのは初」。従来は旅館業法で顧客を泊められるのは「窓のある部屋」と定められており、一部の客室に窓がない船舶は旅館としての営業許可が下りなかったためだ。
ただ近年、バンクーバー冬季五輪(10年)、ロンドン五輪(12年)、ソチ冬季五輪(14年)、リオデジャネイロ五輪(16年)――といった大会で“ホテルシップ”が導入され、各国での観客の受け入れに一役買っている。
これを踏まえ、政府は今年5月、クルーズ船を活用した宿泊サービスの可否判断を自治体に一任すると発表。五輪の成功に向け、規制緩和を打ち出した形だ。
歴史とアクセスの良さが決め手
これを受けたJTBが横浜市を係留先に選んだ理由は、「1859年に開港し、現在まで日本・外国客船の発着拠点港として機能している歴史があるため」(JTBの鈴木担当部長)。サッカーの会場となる横浜国際総合競技場まで電車で30分、野球の会場となる横浜スタジアムまで徒歩15分、陸上競技が行われる新国立競技場(東京・新宿区)まで電車で約1時間──という立地も考慮した。
横浜市の林文子市長は「数ある港の中から横浜港を選んでもらえて光栄。船外でも観光を楽しんでもらえるよう、山下ふ頭の再開発や市街地の整備も進めていく」と展望を話す。船外でもパブリックビューイングなどを開催し、地域が一体となって大会を盛り上げる計画もあるという。
林市長は「五輪が終わった後も、大規模なイベントがある際はホテルシップを積極的に受け入れていきたい」と話している。
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