アテンザの課題と進化:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
マツダはアテンザを大幅改良して発売した。現モデルがデビューした2012年以来最大の商品改良であるとマツダは力説する。ところで、なぜマツダは今、大幅改良を行うのだろうか?
6月21日、マツダはアテンザを大幅改良して発売した。現モデルがデビューした2012年以来最大の商品改良であるとマツダは力説する。まずはその背景だ。
マツダが現在のラインアップへ向けて打ち出した商品の第1号は、国内で言えば12年の初代CX-5だ。ここからマツダの言う第6世代モデルに突入していった。第6世代とは何かを具体的に定義すれば「魂動デザイン」と「オールSKYACTIV」を共通基盤にしたモデルだ。その技術改革とは何かを掘り下げれば、性能と設計・製造コストという、普通にやれば対立する問題をブレークスルーによって同時に引き上げることを狙った世代だ。
マツダがSKYACTIVを提唱し始めた当初は「何のことやら?」だったマーケットも、その内容を正確に知悉(ちしつ)しているかどうかは別にして魂動デザインとSKYACTIVは何となくポジティブなキーワードとして受け取られている。
コモンアーキテクチャーとは何か?
SKYACTIVとはコモンアーキテクチャーによる開発・生産手法で、要するに戦力集中化戦略である。基礎開発を共用して開発・生産に要するリソースとコストを集中し、その技術レベルを一気に引き上げる。それらの基礎技術を全モデルに敷衍(ふえん)していくことで、個別車種の縦割り開発によるリソースとコストの分散を防ぎ、トータルでのコストダウンと性能向上を両立させる方法だ。
それは新型車の発売時だけでなく、従来のマイナーチェンジにあたる商品改良でも同じである。マツダは第6世代の途中から、商品力のテコ入れのためのマイナーチェンジをやめた。要するに販売の都合上の「変わったでしょ?」とアピールするための意図的な変更は行わないということだ。
技術進歩の差分をアップデートするべく、毎年商品改良を行い、それがラインアップの全てに順次投入される。当然「買ったばかりのクルマなのに商品改良で性能が大幅向上した」という悲劇も生む。そういう恨み節は時折聞く。ではどうすれば良いかと言えば、そこはなかなか難しい。すでに完成している新技術の投入を遅らせれば、これからクルマを買おうという人に対して不誠実になる。本質は「技術の進歩によってこれまでできなかったことができるようになった」ところにあるので、それはどこかのタイミングで商品に反映されるのは止むを得ないし、だったら可能な限り早くというやり方はロジカルだと思う。
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