剛力彩芽が叩かれる背景に、日本人の国民性:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
タレントの剛力彩芽さんが、ネット上で壮絶なリンチにあってしまった。交際宣言したスタートトゥディの前澤友作社長と同じタイミングで、ロシアW杯を観戦した写真をInstagramにあげたところ、批判が殺到したのだ。それにしても、なぜこのような「いじめ」が後を絶たないのか。
自分たちの醜い部分を見つめる勇気
当時、ぎんさん一家のような人たちに厳しく当たらない人たちもたくさんいた。明らかに、このコミニティの人たちに問題があるのだが、明治生まれのぎんさんはそう思わない。
「そりゃあ、おっかさんも悔しい思いでいっぱいだった。地団駄踏みたい気持ちだったが、“悪いのはあの人たちでにゃあ。戦争だがね”といって黙って耐えてござったよ」(NEWSポストセブン 2012年1月2日)
そう考えなければ、やっていられなかったぎんさんの気持ちはよく分かる。が、残念ながらこの「責任転嫁しやすいものへもっていく」というカルチャーが、問題の本質から目を背けさせている側面もある。
例えば、高級官僚の不正を「安倍一強が悪い」で片付けてしまうと、官僚組織の構造的な問題はなんにも手がつけられない。しばらくすると忘れられて、同じような不正が繰り返されて、時の政権が叩かれることが戦後70年繰り返されてきた。
「他者攻撃」や「いじめ」もこれとまったく同じ問題が起きている。
あのときは戦争だったからしょうがない。あのときは未曾有の災害だったからしょうがない。あのときはまだネット社会にまだ慣れていなかったからしょうがない――。
なんやかんやともっともらしい言い訳をつけて、「嫉妬深くキレやすく、同調圧力に弱い」という自分たちの国民性に向き合わない。
凄惨(せいさん)な事件が起きると、「社会」や「時代」を論じるが、本質ではないのでいつもお茶を濁して終わる。そして、しばらくすると同じような「私刑」や「いじめ」が延々と繰り返されるという悪循環が続いている。
ネットリンチ、ブラック企業、運動部……福沢諭吉が問題視した日本人の「怨望」はまだまだ健在だ。これを克服するためにも、まずは自分たちの醜い部分をしっかりと見つめる勇気が必要なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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