熱中症の被害者が出ても、夏の甲子園が絶対になくならない事情:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
夏の甲子園が始まったが、ネット上では水を差すような意見が飛び交っている。多発する熱中症被害を受けて、「涼しい秋の開催」「ドーム球場の開催を検討すべき」といった声が出ているが、筆者の窪田氏は「夏の甲子園」がなくなることは絶対にないという。どういう意味かというと……。
「甲子園利権」を堅守しようという力学
主催社の朝日新聞社、生中継するNHKをはじめ多くのメディアにとって「夏の甲子園」は単なる高校生の野球大会ではない。オリンピック同様に「感動のドラマ」でカネを生み出す巨大利権なのだ。ゆえに、そのドラマの価値を下げるような開催時期や舞台設定の変更は断じて認められないのである。
こういう「甲子園利権」を堅守しようという力学は、プロ野球や高校の側にも見てとれる。これまでのプロ野球のスターたちを見れば一目超然だが、甲子園は球界の「スター誕生」的な機能を長く担ってきた。この舞台で全国的な注目を浴びて、「伝説」をつくった少年は、ドラフトの目玉となり、入団したチームの入場客数やグッズ販売にも大きな影響を与えてきたのだ。
この“甲子園依存”は、少子化に悩む高校もまったく同じだ。大阪桐蔭のような私立高校にとって、「甲子園出場」や「スター選手の母校」という実績が、入学希望者を増やすブランディングになることは言うまでない。
このような「甲子園ムラ」ともいうべき既得権益集団からすれば、球児や観客がバタバタ倒れたくらいで、開催時期や場所を変更するなどありえないのである。
政・官・民にわたって膨大な人々が食い扶持としている原発という巨大利権が、史上最悪の事故を起こしたにもかかわらずストップできないのと同じ構図だ。
バカバカしいと思うかもしれないが、(2)の「ジャーナリズムの忖度」がその動かぬ証拠である。
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