「Amazonとは違う世界を」 古書店に眠る本を“検索”で蘇らせた元リコー社員:熱きシニアたちの「転機」(4/5 ページ)
定年後を見据えて「攻めの50代」をどう生きるのか。新天地を求めてキャリアチェンジした「熱きシニアたち」の転機(ターニングポイント)に迫る。3回目は古書の検索サイト運営会社を起業した元リコー社員の河野真さん(62)。
「黒船Amazon」上陸 戦略見いだせず
1年目の年収が5分の1に激減したのは想定内。サイトの利用者数と古書店の加盟数は順調に伸びており、ひとまず安心だった。
ところが、これからという時に、想定外の大きな出来事が起きた。Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の日本市場参入だ。楽天もネット書店に本腰を入れ始めた。スーパー源氏から古書店が次々と脱会し、経営は一転、大ピンチに見舞われた。
「Amazon(アマゾン)や楽天、ヤフーと同じ土俵では絶対に勝てない。でも、どうしたらいいか分からない。戦略が見いだせなかったのが一番辛かった」と、河野さんは当時の心境を吐露する。「会社が潰れるかもしれない」と妻に弱音を吐いたこともあったという。
しかし、諦めはしなかった。事務所を閉めて自宅で仕事をするなどコスト削減を急ぐと同時に、アクセス解析や仕入れ支援、送料割引など、加盟店向けの新たなサービスを打ち出した。また、古書店を開きたい個人向けに古書店開業支援セミナーも開設。こうした矢継ぎ早の策が奏功し、加盟店数は再び増加に転じた。
程なくして、三省堂書店から「一緒にやりませんか」と声が掛かかった。新刊書店大手の三省堂書店もまた、ネット専業書店の台頭で守勢に立たされ、新規事業を模索していた。神保町本店にスーパー源氏のコーナーを設け、加盟店の古書を三省堂書店でも売れるようになった。古書を新刊書籍と同じように単品管理するためのバーコード発行システムも河野さんが請け負って構築した。
さらには、取引先の1社だった、公式ジャニーズグッズの中古販売を手掛ける「ジャニランド」を三省堂書店に紹介するなど、他社との協業や事業の多角化を推進。それらが実を結び、しばらく横ばいだった会社の売上高が、2017年、大幅に伸びた。
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