内気な野球少年が悲しみを乗り越えて大人気水族館の「カピバラ王子」になるまで:ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論(4/5 ページ)
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。
苦手なタイプは「壁のない人」。初対面なのにグイグイと押してくる女性は無理です
カピバラショーを見学しているとあることに気付く。客の女性の一部は途中からカピバラではなく塚本さんに注目し始めるのだ。「あの飼育員さん、イケメンだよね」という声も聞こえる。実は、塚本さんは竹島水族館随一のイケメン飼育員としても知られているのだ。塚本さんの親友であり、ほぼ同期入社の竹山勝基さん(23歳)は次のように明かす。
「塚本さんの人気はすごいですよ。いろんな女性から一目ぼれされるんです。館内でラブレターを手渡されたり、水族館のFacebookへのメッセージで見知らぬ女性から告白されたり。そのへんをぜひインタビューで掘り下げてください」
塚本さんに確かめると、年に何度か熱烈なアプローチを受けることを認めた上で、「お断りの仕方に困る」と戸惑いを隠さない。
「プライベートだったら簡単です。きっぱり断るか、無視するかのどちらかですね。でも、仕事ではそうはいきません。どんな形にしろお客さんが飼育員の僕を気に入ってくれるのはありがたいことですから」
ちなみに塚本さんの好きなタイプは「自分を放っておいてくれる人」だ。かつて一度だけ女性と交際したことがあるが、自分と休日を合わせてまで一緒にいようとする彼女についていけなかったと告白する。苦手なタイプは「グイグイと押してくるような壁のない人」なのだ。
「僕は人付き合いが苦手なので、初対面の人に対しては5枚ぐらい壁を作ります。仲良くなるためには、その壁を1枚ずつ溶かしていきたいほうです。年下の竹山くんにも1年間ぐらいはずっと丁寧語で接していました」
なかなかの変人である。塚本さんに関しては館内での鑑賞と会話を楽しむことに留めるのが正解なのだと思う。
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