任天堂・宮本茂氏が語った「スマホ対応への苦悩」:「マリオラン」なぜ1200円?(2/4 ページ)
任天堂の宮本茂 代表取締役フェローが「CEDEC 2018」の基調講演に10年ぶりに登壇。10年で最大の変化は「スマホ」だったと明かし、「スーパーマリオラン」の開発などで苦労した過去を語った。
「マリオラン」のリリースはなぜ遅くなったのか
オリジナルのスマホゲームの提供が遅れた理由について、宮本氏は「任天堂は“プラットフォームメーカー”。自社でゲーム機とソフトの両方を生み出し、対応するソフトを他社にも作ってもらうビジネスを行ってきた。他社のハード向け商品を作ったことはなかった」と説明。他社が生み出したスマホにゲームアプリのみを納入することに抵抗があったと説明した。
「私は本来、電話をする目的で携帯電話を所持していた。『ゲームで電池を使い切って、電話に出れなかったら元も子もない』との考えもあり、スマホゲームに積極的になれなかった」
だが、時がたつにつれて「スマホの存在を無視できなくなった」という宮本氏は、「1人でも多くの人に遊んでもらうため、覚悟して(アプリ開発を)行った」と振り返る。
開発テーマは「シンプルで簡単」。適度なハードルを設けてクリア時の満足度を担保しつつも、「気軽にチャレンジし、失敗しても『次は本気を出す!』とラフに遊べるものにしたかった」という。親子で遊べるアプリにしたいとの思いもあったという。
こうした経緯で、ボタンを押さなくても「マリオが自動で走り続け、画面をタップしてジャンプさせる」という同タイトルならではの操作感が生まれたのだ。
「マリオラン」はなぜ1200円だったのか
また、「スーパーマリオラン」を開発していた当時、世間では、スマホゲームでレアなアイテムを得るために莫大な金額を“ガチャ”につぎ込む重課金ユーザーが増えていることが問題視され始めていた。
この問題を踏まえ、宮本氏らは同タイトルの課金方法を徹底的に議論。親子で安心して遊んでもらうことなどを目的に、「(お金を払った分だけキャラが強くなるなど)パラメータやデータに課金額が影響するのはやめる。重課金を目的としたビジネスモデルは使わない」と決断したという。
「各ステージを300円くらいで売るプランもあったが、シークエンス(ステージ間のストーリーのつながり)が難しくなるため、採用しなかった」
その結果、任天堂が選択したのは「買い切り型」のビジネスモデル。一部のステージのみ無料で開放し、続きを遊びたいユーザーに1200円の支払いを課すが、それ以降の追加料金は一切発生せず、全ての要素を提供する――という仕組みだ。
リリース当初、ネット上の意見は「アプリ代に1200円は高い」「いや、良心的な課金システムだ」と賛否両論に分かれたが、配信開始から4日間で全世界で4000万ダウンロードを突破するなど、好調な滑り出しを見せた。
関連記事
- 「信じるものが折り合わない」――コロプラ馬場社長、任天堂との“特許紛争”を語る
スマートフォン向けゲーム「白猫プロジェクト」の特許権を巡り、任天堂と係争状態にあるコロプラ。この特許紛争は、どのような経緯で発生したのだろうか。コロプラ側に見解を聞いた。 - 「ゲームバー」大阪で一斉閉店 著作権団体から警告 任天堂の許可なく大会も
大阪で「クロノス」が運営する“ゲームバー”が3店舗同時に閉店すると発表。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)から警告を受けたためという。どのような点が問題なのか。ACCSに見解を聞いた。 - グリー対Supercell 「クラクラ」特許紛争の行方は
特許権を巡るグリーとSupercellの訴訟は現在どのような状況なのか。「クラクラ」ファンによるTwitter上でのグリー批判をどう捉えているのか。グリーに見解を聞いた。 - 業界関係者が「ポケモンGO」の世界的大ヒットを“予測できなかった”ワケ
「ポケモンGO」が世界的な大ヒットとなっている。しかしアプリ業界の関係者は、ここまでのヒットになるとは誰も予想できていなかった。“アプリのプロ”がヒットを見抜けなかった理由とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.