「カツオは将来、社長になる」 サザエさん好きの慶大名誉教授と考える、磯野家の未来:「波平と出川哲朗さんは同い年」(2/5 ページ)
かつてのベストセラー「サザエさん」のトリビア本「磯野家の謎」の続編が四半世紀ぶりに出版された。著者は慶應義塾大学 名誉教授の岩松研吉郎さん(74)らのグループ。数十年にわたって同作品を愛し続ける岩松さんに、書籍を通じて現代人に伝えたいことを語ってもらった。
磯野家にはヒーローもヒロインもいない
――数十年にわたって、熱烈な「サザエさん」ファンである岩松先生は、作品のどんなところに魅力を感じていますか。
岩松先生: 実に親しみがあるところです。「サザエさん」の磯野家には、ヒーローもヒロインもいません。けれども、それぞれのキャラクターに個性があります。彼らは生活の中で、うっかりした面、のんびりした面、ちゃっかりした面など、色んな一面を見せます。そんな「普通の家族」の姿を描いている点に魅力があると考えています。
――なぜ今回、四半世紀ぶりに出版活動を再開されたのですか。
岩松先生: 文化や価値観がすっかり変わり、「サザエさん」を単なる「昭和へのノスタルジーを描いたアニメ」だと捉える人が増えているな、と危機感を感じたためです。
私は「サザエさん」は単なる“懐古もの”ではないと考えています。なぜなら、第二次世界大戦の敗戦という苦しい時期を超えて、日本人がようやく手に入れた平和な日常生活が描かれているからです。
「サザエさん」の漫画版の連載が始まった1946年は、日本国憲法が成立した年でもあります(施行は47年)。日本人が望んでいた「平和」の実感にあふれた磯野家の生活の魅力を、いまの人たちに学んでもらえるとうれしいです。
――留学生向けの日本語の教材としては、「サザエさん」をどんなふうに使っていたのですか。
岩松先生: かつて朝日新聞の社会面に掲載されていた、漫画版の作品を読んでもらっていました。4コマ形式で毎日連載されていたため、せりふが分かりやすいほか、その時々の社会ネタや季節の話題が出てくるので、留学生に読み書きと文化を同時に教えられるのです。「七夕に短冊を飾る」「お彼岸におはぎを食べる」といった風習を、作品を通じて覚えてくれる人も多いです。
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