企業価値5000億円超 ホンダが頼る「顔認証AIベンチャー」香港トップを直撃:中国公安も採用(2/2 ページ)
「人間の目を超える精度」の顔認証AI技術を持つベンチャー「センスタイム」の香港トップにインタビュー。自動運転の進化に向けて、ホンダもその技術に頼る「次代のITジャイアント」の実像に迫る。
博士号を持つ「スーパー頭脳集団」
――差別化を図るためには人材が重要ですが、現在の従業員数はどのくらいですか? 博士号保有者が多数在籍していると聞きますが、どのような人たちが働いているのですか?
全世界の従業員は2000人ほどです。そのうち半数以上が研究開発(R&D)に携わっています。博士号保有者は150人ほどいまして、ディープラーニングやコンピュータビジョンの知見を持つ元大学教授も20人ほど在籍しています。米マサチューセッツ工科大学(MIT)とも密接な協力関係にあります。
日本法人社長の勞はオムロンで画像認識の技術顧問を20年間にわたって担当した人物です。人材確保のために、通常の募集以外にもIT企業やソリューション系の会社に勤めている人をヘッドハンティングしています。
――日本では「大量の顔データ」を取得することは認められていませんが、中国政府は認めています。その差が、技術革新にも差を生み出しているようにも見えますが、どのように思われますか?
顔認証というのは、私たちが持つ技術の1つに過ぎません。私たちはあくまでプラットフォーマーだと考えておりますので、顔を撮影することや、そのデータをどのように活用するかは、まさに「お客さま次第」なのです。繰り返しになりますが、アルゴリズムを常にアップデートするのが私たちの最も重要な仕事なのです。
急成長するユニコーン企業に日本勢はどう向き合うか
以上が尚ディレクターへのインタビュー内容だ。
センスタイムのオフィスに入ると、商品を説明するための大型のディスプレイが壁沿いにずらりと並び、そのすぐ横では従業員が働いている。オフィスが手狭になるほど、急成長しているのだ。
新しいオフィスに引っ越す直前だったこともあり、広報担当者は「次回、訪れるときは、きれいなショールームも完備しています」と話していた。成長の速度がどれだけ速いかを表しているともいえよう。
ただ、それだけ成長しても「関心があるのは経営よりもエンジニアリング」という雰囲気があった。創業者の湯教授や、その教授の教え子で共同創業者の徐立氏も技術志向が強く、「お金(経営)よりも技術開発に関心がある」と、担当者は話す。しかし、企業が大きくなればなるほど、経営トップは人材育成や経営についても考える必要が出てくる。ホンダも、創業者の本田宗一郎の右腕に、経営に長けた藤沢武夫という名参謀がいたからこそ、倒産せずに済み、日本を代表する大企業になった。
センスタイムの従業員の平均年齢は27歳と若い。豊富なビジネス経験を持っている尚ディレクターはマネジメントサイドから会社全体を支える適任者となれるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「浮いた残業代は社員に還元すべき」 アルプス電気・栗山社長
自動車やスマートフォン向け電子部品を製造販売するアルプス電気が、残業時間削減で浮いた人件費を賞与で社員に還元する制度を2018年夏から実施。その狙いを栗山年弘社長に聞いた。
増税前に買ってはいけない! 「虚大都市・東京」のマンション事情
「東京は永遠に輝き続ける」という「不滅神話」がはびこる東京のマンション事情。しかし2カ月連続で値下がり傾向が出るなど異変の兆候が出ている。消費税増税に金利上昇と、不確定要素がある中で何を参考に売買を決定すればいいのだろうか。
「シンギュラリティには一生行きつかない」 安川電機・津田会長に聞く「ロボット産業の未来」
ロボットメーカー大手の安川電機会長で、国際ロボット連盟(IFR)の会長でもある津田純嗣氏にロボットの果たすべき役割について聞いた。
「グーグルには売らない」 日本勢は音声翻訳で覇権を握れるか
音声翻訳の技術は向上し、2020年の東京オリンピックまでには多くの場所で手軽に使えるようになりそうだ。日本勢がグーグルやマイクロソフトに打ち勝って、音声翻訳の市場で覇権を握れるかどうかが今後のカギとなる。
お金なし、知名度なし、人気生物なし 三重苦の弱小水族館に大行列ができるワケ
休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。その秘密に迫った。
フォーミュラE参戦に見る「仁義なきEV主導権争い」
「電気のF1」と呼ばれ、電気自動車推進のツールとなっているフォーミュラE。メルセデス、BMW、アウディの「ドイツ御三家」などが参加する一方、日本勢のトヨタ、ホンダは不参加。そこで繰り広げられる「EV主導権争い」の実情とは――。
「民泊2020年問題」勃発 揺らぐ「観光立国」ニッポン
民泊を合法的に整備するために制定された民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月15日に施行される。だが、新法に基づいて各自治体に出された届け出件数は5月11日時点で724件しかない――。

