だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
安倍政権が「移民政策」を押し通そうとしている。人手不足の分野で外国人労働者を受け入れるというものだが、筆者の窪田氏は危機感を覚えているという。外国人を受け入れることで人手不足が解消するはずなのに、なぜ危機感を覚えるのか。
「人手不足=悪」という考え
日本はサービスも品質も、さらには労働力に至るまで、さまざまなものを「過剰」に配置するきらいがある。
例えば、人手不足だと騒ぐわりには、コンビニの新規出店数は閉店数よりも上回っている。ドミナント戦略のせいで、同じエリアでこれだけあれば十分という数をはるかに超えて出店して、外国人留学生をバイトに雇って回している。
建設現場も人がいなくて大変だというが、いまの職人不足は、東京五輪の影響も大きい。終わった後に確実に不況が訪れ、インフラも金食い虫になることが見えているイベントのために、貴重な労働力が奪われるのは、生産性の悪い話である。
太平洋戦争時に刷り込まれた「産めよ増やせよ」という思想のおかげで、日本人の多くは人口が増えることは何よりもめでたいことで、「人手不足=悪」という考えが骨の髄まで染み込んでしまっている。だから、人手不足という恐怖をあおられると、「じゃあ、移民でもなんでもじゃんじゃん持ってこい」と安易な方向へ流れがちだ。それが前回のコラムで触れた、頭数だけが合えばいいという日本型組織の「員数主義」にもつながっている(関連記事)。
今国会の所信表明演説で、安倍首相はノーベル賞を手にした本庶佑氏を引き合いに、『私たちも、これまでの「常識」を打ち破らなければなりません』と力説した。
ならば、まずは「減った人口をどうにかして頭数を合わせなくちゃおしまいだ」というこれまでの常識を打ち破って、日本を衰退させる「移民政策」を思い直していただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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