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障がい者が働く大繁盛の「チョコ工房」設立した元銀行マンの決意熱きシニアたちの「転機」(2/5 ページ)

定年後を見据えて「攻めの50代」をどう生きるのか。新天地を求めてキャリアチェンジした「熱きシニアたち」の転機(ターニングポイント)に迫る。4回目は障がい者を雇用するチョコ工房「ショコラボ」を起業した元銀行員の伊藤紀幸さん(53)。2018年11月1日に7周年目を迎えるショコラボの伊藤さんに話を聞いた。

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順風満帆な会社員生活 30歳で突然の「宣告」

 伊藤さんはバブル華やかなりしころ、大学を卒業して三井信託銀行に入行。不動産畑や融資畑を歩み、順風満帆なサラリーマン人生を送っていた。しかし、30歳の時、人生最大の転機が訪れる。生まれた子どもに障がいがあることを、医師から告げられたのだ。

 一瞬、目の前が真っ暗になった。それでも一縷(いちる)の望みを託し、脳に効くとされた体操教室や健康保険適用外の医療機関を試すなど、できる限りの手を尽くそうと走り回った。

 一方、会社にはあえて子どもに障害があることを伏せた。「家庭の事情を万が一仕事のパフォーマンスが落ちた時の言い訳にはしたくなかった」(伊藤さん)からだ。また、もし事情を告げたら、転勤のない職場に異動になることが容易に想像できた。家族のためには良いかもしれない。しかしそれは、銀行員にとって出世の道が閉ざされることを意味した。

 そんなある日、帰宅すると何か思い詰めているような祥子さんの様子に気付いた。理由を聞いたら、予想だにしなかった言葉が返ってきた。「私たちが死んだ後、この子はどうやって生きていくのか考えると、夜も眠れない」。

 その一言にハッとした。自分は父親としての責任を十分に果たしていないのではないか。実際、仕事が忙しくて息子と会話する時間がほとんどないため、発語が遅れていた息子の言葉を祥子さんは完璧に分かるのに、自分は全然理解できない。翌日、会社で上司に全てを話した。

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おとなの味のオレンジピールも一つ一つ手作り
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ドライフルーツをカットする作業は難しい

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