世界一の印刷インキメーカーが、「食べられる藻」を40年以上前からつくり続ける理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
子どものころソーダ味のアイスを食べて、舌が青色になった人も多いのでは。鏡を見てびっくりした経験があるかもしれないが、いまのアイスを食べても同じように青くなるのだろうか。ならないのである。なぜ青くならないのか気になって調べたところ、意外な事実が判明して……。
先輩たちも驚いているはず
ご年配の方などには馴染み深い健康食品だと思うが、こちらのクロレラも20数億年という太古の昔から生き延びてきた1000分の3〜8ミリという極めて小さな植物で、豊富な栄養素が含まれている。そのため日本では敗戦後の食糧難を救う「夢の食品」として研究され、1971年に市販された「サン・クロレラ」をはじめ、クロレラ系健康食品が薬局に溢れかえり、多くの人々の支持を獲得していたのである。
当時のスピルリナ戦略を、DICライフテックマーケティング部、刈田隆マネジャーが振り返る。
「クロレラをお手本にさせていただいたようですが、残念ながらあそこまでの認知度は広がらなかったようです。当時の愛好者アンケートを見ると、経営者や役員、あるいはスポーツ選手などばかり。健康に対して意識の高い方たちの、知る人ぞ知る健康食品という感じだったのでしょう」
このような苦労人の過去を耳にして「おや?」と思う人もいるだろう。先ほど紹介したように、工場を次々と建てなくてはならぬほど、生産が追いつかなかったのは大ブレイクをしていたからではないのか、と。
その疑問をぶつけると、前出の学術部長が苦笑いをする。
「今の若い人たちは、需要に対してのマーケティングと考えるでしょうが当時の日本企業は、自分たちで需要をつくりだしながら製造をするというのが当たり前。ですから当時の営業をされていた方たちは本当に大変だったと思いますよ」
こうして厳しい戦いを強いられていく中で、いよいよブレイクの兆しが見える。1980年代に入って米国からはじまった「スーパーフード」の中で、スピルリナ人気がじわじわと上がっていき、先ほど紹介したような世界的セレブたちに支持されたことで、「ここ4〜5年でかなり認知度が上がってきた」(刈田マネジャー)のだ。しかも、そのようなスピルリナ認知とともに、冒頭で紹介したように、さまざまな食品の「天然色素」としての活用も増えてきたという。
「これまでどんなに営業をしても相手にしてもらえなかったそうそうたる大手食品メーカーさんがありがたいことに次々と採用していただいている。まさかこんな風になるとは、もう既に退社されてしまった、我々の先輩たちもみなさん驚いていると思いますよ」(学術部長)
例えるのなら、実力がありながらもなかなかブレイクできなかった演歌歌手が紅白出場で一気に「全国区」にのし上がったようなものだが、同社のマーケティングは思ったほど浮かれた様子ははない。むしろ、極めて冷静だ。
「認知度はまだ足りていないと思っていますので、我々が40年以上続けてきた安心、安全ということを前面に出してしっかりとPR活動をしていきますが、食品は急に流行すると急に飽きられますのでそれが怖い」(刈田マネジャー)
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