女性の昇進意欲を左右する基幹的職務経験:何が必要か?(1/6 ページ)
政府は女性管理職の割合を2020年までに少なくとも30%程度とする目標を掲げている。しかし、この「2020年30%」という目標の達成は厳しい状況にあるのだ。その障壁の1つとなっているのが、女性の昇進意欲を高めることである。
政府は指導的地位に占める女性の割合を2020年までに少なくとも30%程度とする目標を2003年6月に掲げて以降、女性の参画を拡大させるための環境を整備し、企業などに女性活躍の取り組みを促進している。
だが、この「2020年30%」という目標の達成は厳しい状況にある。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、課長相当職に占める女性の割合は、10.9%(2017年)である。2020年までは残り2年ほどであるが、目標値とは大きな開きがある。
女性の管理職比率を高めるために企業に求められることは、採用者に占める女性割合の引き上げや家庭との両立の支援のほか、管理職に必要な知識やスキルを習得できるように職場の配置の男女差を解消することが重要であることを筆者はこれまでに指摘してきた(※1)。
ただ、女性の活躍を進める上では企業がさらに取り組むべき課題がある。それは女性の昇進意欲を高めることである。
日本生産性本部が実施した「第8回『コア人材としての女性社員育成に関する調査』」(2017年1月(調査期間は2016年8〜9月))によると、女性社員の活躍を推進する上で「女性社員の意識」が課題であると回答した企業の割合は80.9%と最も高い(複数回答)。
企業が女性を部長以上に登用したいと考えてもそれが実現しない理由として、業務の難易度が増したり責任が重くなったりすることを女性社員が望んでいないことや、ロールモデル(豊富な職務経験を持ち模範となる人物)の不足などが指摘されている(※2)。
企業は女性の昇進意欲を高めるために、どのような取り組みができるのだろうか。本稿では、まず昇進意欲の男女差の現状を確認した上で、企業がどのような人事管理を行えば女性の意識を向上させることができるのか、昇進意欲につながる女性の初期キャリアの形成のあり方について検討する。
※1 菅原佑香「女性活躍に積極的な地域はどこなのか(後編)」(大和総研レポート、2018年2月9日)、「女性活躍による中小企業の生産性向上の余地」(大和総研レポート、2018年4月27日)を参照。
※2 労働政策研究・研修機構(2015)「採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査結果」調査シリーズ No.132
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