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長野県、山梨県、静岡県が「首都圏」になる日リニア開通で日本の「働き方」が変わる(4/5 ページ)

2027年に東京(品川駅)・名古屋間の開通が予定されているリニア中央新幹線(37年には名古屋・大阪間も開通予定)。開通後は移動時間が飛躍的に短縮されるため、長野県、山梨県、静岡県も東京までの通勤圏になってくる。日本の働き方にどんな影響を与えるのかを考えてみた。

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静岡県民の生活の在り方も変わる

 リニアの開通効果は山梨県や長野県など沿線のみにとどまらない。リニアが全線開通すると、現行の東海道新幹線の役割も変わることが考えられるのだ。東海道新幹線は、首都圏・中京圏・近畿圏を結ぶ輸送を高速かつ大量に担っている。この役割をリニアが代替することになると、東海道新幹線では、東京・品川・新横浜・名古屋・京都・新大阪にしか停車しない最速タイプ「のぞみ」の割合が減り、各駅停車の「ひかり」や「こだま」のタイプが増加することが見込まれる。

 静岡県内の各駅に停車する列車が増えることで利便性が増せば、静岡県に住み、東京のオフィスへ通う、といった働き方をする人も、現状よりさらに増えるだろう。リニア開通が、沿線ではない静岡県民の生活を変えるという副次効果は興味深い。もちろん「首都圏」の定義が変わるわけではないものの、少なくとも「通勤圏」が大きく変わることは間違いないだろう。

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2018年時点の東海道新幹線ダイヤのイメージ(JR東海公式Webサイトより)
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リニア全線開業後の東海道新幹線ダイヤのイメージ(JR東海公式Webサイトより)

「距離」を意識しない生活は価値観も変える

 リニア開通で移動時間が短くなることで、生活の質が変わることはもちろんだが、もっと大きな効果は、働く人の価値観にも影響を与える可能性があることだ。前出の入山准教授は語る。

 「都市間の移動が容易になることで、むしろ商談や打ち合わせも実際に対面で行うケースが増える可能性があります。ネットが普及してWeb会議などが簡単にできる今の時代だからこそ、対面で意見を交換する重要性が高まっているからです。そもそもネットで入手できるような断片的な情報はビジネスにおいてあまり意味を成さなくなっています。ゼロから新しい価値を生み出すようなイノベーションを起こすのに必要なのは、実際に人と人が面と向かって話し合い、異分野の知と知の組み合わせを探る『知の探索』なのです」

 人口減少で労働力が不足する中、一人一人の生産性を上げていくしか、わが国が諸外国と渡り合っていく術はない。移動が容易になり、距離を意識しない生活に切り替わることで個々人が持つ発想も広がり、より有意義な働き方ができるようになるだろう。

 リニア開通をどのように生かすのかは利用する人次第であり、それぞれの価値観が試されている。(終わり)

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車窓からは甲府盆地が見える(山梨の実験センターでの試乗時に撮影)

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