「宇宙の謎に迫る国家プロジェクト」に、日本学術会議が猛反発のワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
岩手県で、超巨大プロジェクトが持ち上がっている。その名は「国際リニアコライダー」(ILC)。この施設が完成すれば、まだ解明されていないさまざまな謎に迫ることができるわけだが、なぜか日本学術会議が猛反対している。その理由は……。
なぜわざわざ日本で?
そんな世界的な研究所を上回る施設を日本に造ろうじゃないの、というのがILC計画だ。
「なぜわざわざ日本で?」と首をかしげる方も多いかもしれないが、推進している方たちのお話を聞いてみると、いくつか大きな理由が見えてくる。
まず、日本は、中間子理論を提唱した湯川秀樹から、近年のニュートリノ天文学の小柴昌俊氏、6つ以上のクォークが存在を予測した益川敏英氏、小林誠氏まで、多くのノーベル物理学賞受賞者を生むなど、世界の素粒子物理学をリードしてきた。また、加速器に関する技術も世界一と評され、茨城県つくば市にあるKEKB加速器は現時点で世界でも最も密度の高い電子ビームをつくることができる。
そんな“素粒子研究先進国”である日本の競争力をILCでさらに確固たるものにしようというのが、まず1つなのだ。
そして、もう1つ重要なのが、経済効果だ。
世界中から優秀な頭脳が集結してくるわけなのだから、経済効果を期待する声が出るのは当然だ。事実、CERN周辺には世界中の科学者が家族を連れて定住したことで、消費や観光など地域振興が成功している。しかも、ILCが優れているのは、その効果が続く「期間」だ。どんなに「頑張れ、ニッポン!」「万博で大阪を元気に!」と叫んだどころで、五輪や万博というイベントは数週間から半年ほどで閉店ガラガラとなって、後には莫大な維持費がかかる「負の遺産」が残ってしまう。事実、東京五輪で新たに建設されている競技施設も既に大赤字が試算されている。
が、ILCは違う。世界中からさまざまな研究者が訪れ、入れ替わり立ち替わり30年近く研究が続けられるという。設立から60年を経たCERNが活況していることや、素粒子物理研究の性格からしても、極めて息の長い研究施設になる見込みなのだ。
そのような意味では、ILC計画とは、日本の東北で「科学のオリンピック」を30年間ぶっ続けで開催をするようなものと言っていいかもしれない。
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