「宇宙の謎に迫る国家プロジェクト」に、日本学術会議が猛反発のワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
岩手県で、超巨大プロジェクトが持ち上がっている。その名は「国際リニアコライダー」(ILC)。この施設が完成すれば、まだ解明されていないさまざまな謎に迫ることができるわけだが、なぜか日本学術会議が猛反対している。その理由は……。
そろそろ建設的な議論を
そんなのはお前の妄想だと思うかもしれないが、今回の検討会の「案」の中にも、そんな負の感情がちらほらと垣間見えている。
『なお、ILC計画への予算投入が他の科学技術・学術分野に影響を及ばさないように、「別枠の予算措置とする」との議論があると聞いている。(中略)仮にも「別枠予算」という位置づけが、学術コミニティにおける批判的検討の機会をバイパスするようなことにつながるとすれば、日本の学術全体にとって、そしてILC計画自体にとっても不幸なことである』
とって付けたような記述だが、実は検討会の皆さんが一番言いたいことはこのあたりのような気がしてならない。いずれにせよ、このような不平不満感丸出しの人たちに、「意義」を審議せよ、といくらお願いしても、結局のところ、限りあるカネを奪い合う「パワーゲーム」に流れていくのではないか。
研究者の皆さんで丁々発止やるのも結構だが、年間数百億円のカネを払うのは我々国民である。にもかかわらず、国民の間ではILCに関しての認知は進んでいない。マスコミの友人たちに話しても「何それ?」と言われる始末だ。
「ねたみ」や「そねみ」のないフラットな人間たちの間で、本当に実現できるのか、安全性はどうなのか、そして、ILCでどういう未来を描きたいのか、という建設的な議論もそろそろ始めるべきではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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