結局のところ、水道はどうすればいいのか 公も民もダメダメな理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「水道法改正」が通過しようとしている。改正案のポイントは、「コンセッション方式」の導入だ。老朽化した水道管を取り替えるのに莫大な資金が必要になるので、このような案が出てきたわけだが、本当に民営化してもよいのだろうか。いや、公営化のままでも問題があって……。
事業者の数が多すぎる
「民営化ハンターイ」の方たちがもてはやす「公営化」で、なぜこんな目を覆うような惨状となってしまったのかというと、実は犯人は分かりきっている。
事業者の数がバカみたいに多すぎるのだ。
「全国の水道事業は1400弱。複数自治体で運営する事例もあるが市町村経営が原則で、合併を除くと大きな変化がなかった。少子高齢化などで給水人口が5万人未満の小規模事業者は約950もあり、職員が2〜3人という事例も多い」(日本経済新聞2017年11月20日)
電力やガス、鉄道などを見れば一目瞭然だが、公共サービスを安定的に提供するのは「広域化」が欠かせない。明らかに赤字の過疎地でも都市部と同じレベルの公共サービスが提供するには、ある程度のスケールメリットがなくてはいけないのだ。
ここまで言えばもうお分かりだろう。破たん寸前の水道事業を健全にまわすためには、1400も乱立する事業者を整理して、ひとつの県に1つの水道事業者、あるいは「東日本水道局」みたいに広域エリアで1つにまとめるしか道はない。実際、香川県は今年4月、県内16市町の事業を統合して、全国初の1県1水道体制をつくっている。
このような全国的な「水道事業統合」が実現すれば、まず拠点や人員が減る。ノウハウの共有や、リクルートも一括でできるので生産性が格段に向上する。さらに言えば、水道の「質」も上がるはずだ。
「民営化で水道がハチャメチャになる」論者の方を前にして大変申し上げにくいが、実は公営水道でも、一部の役人と懇意の工事業者がやりたい放題で、既に十分ハチャメチャという動かしがたい事実がある。
例えば、橋下徹氏の時代から「水道統合」でやり玉に上がってきた大阪市の水道は不正の温床となっており、今年3月に発表された市の調査では、業者が安い資材を使ったりする「不正工事」が76件あった。しかも、それは市職員が不正を認識したままスルーしていたのだ。
他にもあまり注目されないが、自治体の水道局や水道工事を舞台にした汚職は定期的に発生している。
なぜこうなるかというと、先ほども申し上げたように小規模事業者が多いからだ。
全国で1400も乱立する一方で、人員も少ないため、権限が個人に集中してガバナンスが崩壊している。つまり、分かりやすく言うと、全国の市町村に「水道利権」がバラまかれているため、全国に小さな猿山のボス猿が溢れかえっている状態なのだ。
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