同性愛公表のパナソニック取締役ベイツ氏「LGBTへの差別は日本経済の損失」:若者のロールモデルになりたい(5/5 ページ)
6月にパナソニック初の外国人取締役に就任した米国人のローレンス・ベイツ氏が、同性愛者であることをカミングアウト(公表)している自身の経験について、就任後初めて取材に応じた。
日本の経済成長のために
――それこそ、優秀な外国人材が喉から手が出るほど欲しい日本にとって、貴重な外国人材の流出ですね。
その通りだと思います。私がかつて会頭を務めていた在日米国商工会議所(ACCJ)が今年9月、在日英国商工会議所など4カ国の在日商工会議所と共同で、LGBTカップルに婚姻の権利を認めることを趣旨とした提言書を発表しました。婚姻の権利の容認は日本の経済成長のためにも大切だと、提言書は記しています。その他、日本には、私もメンバーになっていますが、LLAN(LGBTとアライ=支援者のための法律家ネットワーク)といった組織も、LGBTの権利向上のために活動しています。
最近、東京都渋谷区や兵庫県宝塚市など、同性カップルを婚姻に準ずる関係として証明する同性パートナーシップ制度を導入する自治体が全国的に増えています。これ自体はよい流れだと思いますが、中央集権の日本では、自治体の条例にどれだけ法的効力があるのかはっきりしません。やはり国の法律が変わらないと、現状を大きく変えるのは難しいのかなと感じています。
そのためにも、まず、ビジネス界や法曹界、自治体などさまざまなところでLGBTに関する議論が盛り上がり、LGBTに対する正しい認識を多くの人が共有することが大切だと考えています。私自身もLGBTの一人として、パナソニックでの職務とは直接関係ありませんが、こうした活動にこれからも積極的にかかわっていきたいと思っています。
著者プロフィール
猪瀬聖(いのせ ひじり)
慶應義塾大学卒。米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。日経では、食の安全、暮らし、働き方、ライフスタイル、米国の社会問題を中心に幅広く取材。現在は、主に食の安全やライフスタイル、米国の社会問題などを取材し、雑誌などに連載。また、日本人の働き方の再構築をテーマに若手経営者への取材を続け、日経新聞電子版などに連載している。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。
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