私が「ドラクエ」から“Vチューバー”アイドルのプロデューサーになった理由:スクエニ取締役・齊藤陽介の仕事哲学【後編】(6/6 ページ)
スクエニ取締役の齊藤陽介さんは「ドラクエX」のプロデューサーを引退し、現在は「Vチューバー」アイドルを手掛けている。なぜ、「ドラクエ」から「Vチューバー」のプロデューサーに転じたのか。
「バーチャルアイドル」で武道館を埋めたい
――「GEMS COMPANY」を今後どのように「面白い」ものにしていきたいですか。
面白いという言葉か適切かどうか分からないですが、何かしらの感動を与えたいと思います。私は彼女たちをアイドルだと思っているので、日本武道館やさいたまスーパーアリーナを埋めるライブをすることを、最終的なゴールにしたいと考えています。先ほど例に出した、AKB48に似た身近な感動を提供していきたいということと同時に、「生身の人間ではできないライブ」というのをやってみたいのです。
例えば、東京には来られなくても、全国からVRのヘッドマウントをつけることによって、普段のライブ会場では味わえないような感動を彼女たちなら与えられるかもしれないわけです。こうした新しい体験をお客さんに提供し、楽しんでもらうところをゴールにしたいですね。
――今後の「GEMS COMPANY」の展開や展望を教えてください。
そうですね。現在までに各所で築き上げられた「アイドル」の形を描きながら、これからの時代に沿った新しいテイストもしっかりと加えていく形にできればと思っています。
素晴らしい楽曲を提供することはもちろんですが、インターネットを通じた新しい形のコミュニケーションをファンと共に作っていくことや、「面白いな、かわいいな」といってもらえるような商品を展開し、「こんなの見たことない!」と思われるようなライブエンタテインメントを提供したいと考えています。
まずはGEMS COMPANYってどんな女の子たちがいるんだろうというところを見ていただきたいので、ニコニコ生放送でだいたい1カ月に1度放送している「じぇむかんTV」だけでも見ていただけたらありがたいですね。
19年も初頭から「こんなことができるの!?」と驚いてしまうようものをご覧いただけるかもしれません。ぜひご期待いただければと思います。
――これまでになかった新しい事業をやられているわけですが、いまの若い人に何を伝えていきたいでしょうか。
「ゲームだけがエンターテインメントじゃないよ」ということを、おっさんとして示していきたいです。スクウェア・エニックスという会社は「面白い」ものであれば何でも挑戦できる会社だと示していきたいのです。これは社内にいるスタッフはもちろんですが、外の人からも、「こんな新しくて面白そうなことをやれる会社なんだ」と思ってもらえるようにするのが重要ですね。こうすることで、もっと「面白い」ものを作りたいと思っている外部の「面白い」人材が入ってきてくれると信じています。
著者プロフィール
河嶌太郎(かわしま たろう)
1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「DANRO」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。
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