「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。
「悪しき労働文化」が肯定されている、3つの問題
では、いったいどのあたりの「悪しき労働文化」が肯定されているのか。実は以前からネット上では、「佃製作所はブラック企業」と指摘されていた。それらも踏まえ、筆者は大きく3つの問題があると考えている。それは以下だ。
(1)佃社長による「やりがい搾取」
(2)長時間労働を強いる職場の同調圧力
(3)とにかく気合いで乗り切る精神至上主義
まず、(1)から説明しよう。「やりがい搾取」とは東京大学の本田由紀教授が唱えた概念で、経営者が社員に対して、「夢」や「やりがい」を強く意識させることで労働力を不当に利用するというもの。
「働く」ということは、「夢をかなえるため」「自分が成長するため」と経営者から叩き込まれた社員は、自らすすんで時間外労働やサービス残業に身を投じ、低賃金や低待遇であっても不平不満を口にしない。採用ページなどで「夢」「自己実現」「成長」といううたい文句を掲げるブラック企業が多いのはそのためだ。
そんな「やりがい搾取」は残念ながら佃製作所にビタッと当てはまってしまう。
タイトルにもなっているロケットや、今回の無人トラクターなどは実はすべて社長である佃航平の「夢」だったが、彼の熱意にほだされるうち、気が付けば全社員がその「夢」を追いかけている。ブラック企業における「やりがい搾取」の典型的なパターンだ。
だから、社員たちは自らすすんで残業をする。佃航平に「もう帰れ」と言われても自主的に遅くまで働いている。それどころか、業務外の労働まで喜んでやってしまう。
ドラマをご覧になった方はよく分かると思うが、佃製作所の社員たちは、佃社長の思い付きで、他社の訴訟のために調査や、農作業など時間外労働にも駆り出されている。あれに賃金が支払われているか否かは不明だが、もし払われていないのなら完全に「やりがい搾取」である。
「下町ロケット」はフィクションなので「夢」は最終回で必ずかなう。社員たちの滅私奉公も報われる。だが、現実はそう甘くない。
もし佃製作所のような従業員200人規模の社長が、自分の「夢」を社員に押し付けて、それを理由に、長時間労働や、業務と関係のない仕事をやらせていたら――。間違いなく社員たちから不満が噴出し、「洗脳系ブラック企業」として大炎上してしまうだろう。
いくら家族的な雰囲気の中小企業といえど、宗教団体ではないのだ。
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