稀勢の里が「ケンシロウ」になれなかった理由:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
横綱、稀勢の里が身を引いた。漫画『北斗の拳』に登場するラオウの名セリフを感じさせられる言葉を口にしたので、話題になった。自身の土俵人生をラオウに重ねていたのかもしれないが、筆者の臼北氏は主役の「ケンシロウ」になるべきだったのでは? と指摘している。
古き良き時代の日本出身横綱を連想
それでも稀勢の里は近年で最も多くのファンに愛され、大きな期待を一身に浴びていた人気横綱だった。間違いなく、そう言い切れるだろう。
モンゴル人力士たちが隆盛を誇る中、19年ぶりの日本出身横綱となって必ずや稀勢の里時代を到来させるはず――。そういう願いを抱く人たちが世の中に数多くいたからこそ、人気横綱として出場すれば土俵上で必ず最も大きな声援を受けていた。
どんなにボロ雑巾のような醜態をさらけ出そうが、最後の最後まで可能性は限りなく低いとは分かりつつ「もしかしたら、ここから何とか奇跡の復活を果たしてくれるのでは」と見果てぬ夢を心の片隅で祈念していた人もかなりいたはずである。
口数も少なく、生真面目。そして愚直。いい意味で稀勢の里には古き良き時代の日本出身横綱を連想させるようなイメージがあった。対戦成績では圧倒されていながらも連勝記録を止めるなど、ここぞの大一番で白鵬に土をつけていた勝負強さも持ち合わせていた。おそらくそういう姿が昨今の相撲界では新鮮に映って多くの人たちのハートをとらえ、ようやく長年に渡って切望されていたぴったりのヒーローが現れたと諸手を挙げて歓迎されたのだろう。
その一方、数々の記録を塗り替えた絶対的存在の横綱・白鵬は確かに強い。かつて不祥事が続き、人気が凋落していた暗黒時代を一人横綱として支えていたのも事実だ。しかしご存じのようにここ最近は大横綱でありながらも、素行や言動には看過できない問題が毎度のごとく見られ、有識者や好角家たちから批判を浴びせられている。
だから今や完全に「ヒール横綱」のイメージが定着した白鵬をぶっ倒す角界の救世主として、稀勢の里に多くの人たちが白羽の矢を立て、その新時代の到来を待ち望んだ。それが昨今の相撲ブームの礎になったと考えている。
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