お笑いをつまらなくしたのは誰か セクハラの境界線:視聴率ダウン(3/4 ページ)
ダウンタウン松本さんの番組での発言がセクハラであるという批判。つるし上げに対し、「こんなんじゃ何も言えない」「息がつまる」という声も出る中、ハラスメントへのスタンスを考えます。
(3)「笑ってはいけないシリーズ」の視聴率ダウン
18年末のダウンタウン「笑ってはいけないシリーズ」の視聴率がダウンしたと報じられました。その件についてデイリー新潮は「川口春奈だけが面白かった『笑ってはいけない』視聴率低下で“保守的すぎる”の声」という記事を掲載しました。
笑いを作る上で、古典落語にも多く見られる差別や暴力的言動といったものは欠かせない要素の一つです。もちろん古典落語にも爆笑などない、おとぎ話のような無難な噺(はなし)もありますし、デイリー新潮のいう「保守的な笑い」という、爆笑を求めない人もいることでしょう。しかしそれをすべての国民に強要するのであれば、それは組織に好ましくない言葉を禁じるニュースピークによって思想統制したビッグブラザーの世界です。(オーウェル「1984」より)
ではハラスメントを放置してよいのでしょうか?
全く違います。そうではなく、ハラスメントと日常生活、ハラスメントと芸能をごっちゃにしなければよいのです。
松本さんの言動は芸能という特別な作品の一つ。日常生活の社会そのものではありません。松本さんの発言は番組の演出上のボケであって、日常生活で発せられるものとは区別しなければなりません。「テレビで言ってるから自分も言って(行動して)よい」と考えてしまうような愚かな思考がダメなのであり、そんなレベルの人間であれば、テレビや映画の戦争や殺人シーンですら現実と思ってしまうのではないでしょうか。刑事ドラマも戦争中の時代設定ドラマもすべて禁止しないと犯罪やハラスメント行為が助長されるのでしょうか? そこまで視聴者一般はバカだと言いたいのでしょうか?
番組でおもしろいことを発するのが仕事である芸人さんにおもしろいことを言うなというのは、言論統制以外の何ものでもありません。芸として笑いを発信する本当の芸人さんたちは、日常生活でも常時芸を演じている訳ではありません。
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