嵐の会見は「100点」、その理由は?:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
人気アイドルグループ「嵐」の記者会見が話題になっている。ネットを見ると、多くの人が嵐の対応に「好感がもてた」といったコメントをしているが、筆者の窪田氏はどのように分析しているのか。プロの目から見ると……。
櫻井・二宮コンビがリスキーな質問に対応
すでに多くで報じられているので全文は引用しないが、櫻井さんは2年近くの期間をかけてファンに感謝の思いを伝えることを強調し、自分たちの活動の「姿勢」を通して、「無責任かどうかというのを判断していただければと」と返したのだ。
これを一部マスコミは「記者を論破した」とはやし立てているが、そうではない。「ブリッジング」と呼ばれるスピーチのテクニックで、ネガティブな評価の判断を社会に委ねると前向きに切り返すことで、質問者との「衝突」を避けているのだ。もしここで「僕たちとしては、無責任じゃないと考えています」などと答えると、そこだけ切り取られて、なんとなくファンを置いてけぼりにしているような印象になった恐れもある。それを見事に回避したのは、さすがキャスター経験のある櫻井さんと言えよう。
ただ、櫻井さんばかりが注目されているが、実は二宮さんの「嫌な質問」のさばきも非常に素晴らしい。「無責任」質問をした記者は、「今回は大野さんが矢面に立つというか、悪者にされてしまう可能性もある」といった質問もしているのだが、これに対して、うまく処理したのが二宮さんだった。
「1人がやりたくないというときは、どうしてそう思うのかみんなで話し合って決めていく。もしリーダーが悪者に見えるのであれば、それは我々の力不足です」
これも先ほどと同じで、「悪者じゃないです」とムキになって記者を論破しても、おかしな空気になるだけだ。あくまで、自分たちの中での認識を強調して、伝え方が足りないとして、誰も傷つけない結論へと着地している。見事としか言いようがない。
このように櫻井・二宮コンビがリスキーな質問に対峙(たいじ)する場面はここだけではない。
例えば、「解散ではないのか」という質問に対しも即座に櫻井さんが否定し、続く形で、二宮さんが「リーダーの思いを尊重する形で結論に至ったと、みんなで話し合う中でそういう決め方でした」と補足をしている。
また、「メンバーで反対した人は」というネガ質問にも、二宮さんは「反対というか、できませんか? という相談はしました」「リーダーもギリギリまで考えてくれた印象」と、「反対」というネガワードを変換したところで、櫻井さんが「賛成反対でパキッと分かれるのは難しい」「ちょっと、ごめんなさい、難しいですね」とクロージングしていく。
両者がまるで「餅つき」のように交互に合いの手を入れるように、ネガティブな方向性へ持っていこうとする記者の質問を、うまく消火している印象なのだ。
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