横浜家系ラーメンで“天下取り”目指す「町田商店」の野望:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
横浜家系ラーメンがブームになって久しい。ついに大手チェーン「町田商店」の運営会社が上場した。またたく間に店舗数を増やしている秘密は何か?
理想のスープがつくれず店を閉めることも
ラーメン職人としての強い矜持(きょうじ)がある田川氏は、起業した頃、自分が理想とするスープがつくれない時は店を閉めてしまうことがしばしばだった。しかも、固定客が付かず、社員の給料が払えない現実に直面した。そこで、社員を守るために“無駄”なこだわりを捨て、安定してハイレベルのスープを出す方向に考えを改めた。それからは、順調に売り上げが伸びた。
オープンして2年後、さらに良い立地を求めて2号店の物件を探すが、どの大家からも「ラーメン屋は臭くてにおいが強いから」と断られた。そこで田川氏は、別のところでスープをつくり、店に運ぶ方式に切り替えることにした。この方式ならにおいの心配はないだろと手を打った。そうしてオープンしたのが、JR代々木駅近くの代々木商店だ。
プロデュースも手掛ける
田川氏のレシピに基づいてスープをつくる協力工場も現れたが、問題となったのは量が少なすぎることだった。最低でも10店分のキャパが必要という条件を出され、思いついたのがプロデュース業。懸命な営業でなんとか10店分のロットをクリアーし、同じスープを共有する町田商店系の店舗群が形成された。
ギフトはプロデュース店に対して、店舗デザイン、社員研修、オープン後のフォーローといったコンサルティングを行うと共に、麺、タレ、スープといった食材を卸すことで利益を得ている。飲食業ばかりでなく、卸売も兼ね備えたラーメンチェーンとして独自の発展を遂げているのだ。13年からは神奈川県平塚市の自社工場で製麺をしている。
プロデュースして大ヒットとなったのが、ガーデン(東京都新宿区)が展開する「壱角家」だ。壱角家は首都圏を中心に84店を数える。ガーデンは丼の「情熱のすためし どんどん」、ステーキ・ハンバーグの「鉄板王国」などとの複合店舗を一等地に出すなど、ユニークな戦略で店舗数を伸ばしている。
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