2015年7月27日以前の記事
検索
インタビュー

“286連勝”したプロゲーマー「ウメハラ」が明かす勝負哲学――高く飛ぶためには深くしゃがめ梅原大吾が提示する「新しい仕事」【後編】(2/7 ページ)

プロゲーマー「ウメハラ」こと梅原大吾の勝負哲学とは――。そして現在の日本人の働き方をどのように捉えているのか。ITmediaビジネスオンラインに語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

286連勝するということ

――ゲームセンターでは286連勝したという記録も語り継がれています。やはり、自分が得意で勝ち続けられることだからこそ昂揚(こうよう)感のようなものが芽生え、ゲームセンターにまた行きたい、また勝ちたいという欲求につながるのでしょうか。

 もちろん、勝つことを目標にはしています……。でも、実は負けたときのほうがまた行きたいなという気持ちにさせてくれるんですよね。恐らくこれはゲームにはまるほとんどの人がそうだと思うんですよ。

 少なくとも自分の場合、勝つことよりも、負けることが刺激になっていると思います。逆にいうと負けることが刺激にならないと長くは続けられないんですよ。もし、格闘ゲームを余暇で楽しむだけのものにするのであれば、勝つことだけを求めていたのかもしれません。息抜きの時間として捉えているのなら、気軽に楽しみたいですし、勝つことは純粋に気晴らしになりますからね。でも、ゲームが自分の本分、ビジネスにまでなると、ずっと勝ち続けている状態も逆に不安の要素になり得るんです。

phot
EVO2018の予選の模様。「Beast」ことウメハラの試合にはたくさんのギャラリーが詰めかける

――なぜでしょうか。普通の人は「負け=失敗」と捉えていて、できれば負けたくないものだと考える人も多いと思います。

 人間って、負けることで変化を強要されるんですよね。負けることで変わることを強いられる。そのプロセスを通してこそ、「自分は成長しているな」っていう実感が得られるんだと思います。逆に勝ちっぱなしだと、何か毎日同じことの繰り返しをしてしまっているんじゃないかと心配になりますし、退屈にもなってしまうと思うんですよね。

 自分のもともとの性格なのかもしれないですが、負けたときのほうが刺激的で、どうやったら勝てるかなと考える余地が生まれるので、負けることも実は面白いといえるかもしれないですね。

――恐らく一般的には、仕事で負けたり失敗したりしてまで自分を高めたいと考える人は少ないと思うんですよね。

 確かに、仕事をあくまで生きていくためにお金を得る手段として捉えている人達からすると、そうなのかもしれません。そういう人達からすれば、まずは働くことで生活を安定させるのが目標でしょうから、そんなところで失敗したくないと考えるのは当然だと思います。

 でも自分の場合、今でこそゲームが仕事になっていますけど、やっぱりゲームそのものが純粋に生きがいだった時代が長かったので、仕事のための手段として割り切れていないんですよね。ゲームそのものが自分にとって生きる目的になっていて、好きなことをやりつつそれが仕事にもなっているところがあります。好きなことは誰でも追求すると思うのですが、物事を突き詰め始めると、何でも上り調子で、うまくいきっぱなしなわけはないよなと心のどこかで考えてしまうんですよね。

 あとは経験上、子どもの頃から勝った負けたをやってきているので、自分自身が変わっていないのに、ずっと勝ちつづけることができないということも、肌で分かっているんですよ。勝った後に相手の逆襲が必ずあって負けて、それに対して今度は自分が勝つ。このサイクルの繰り返しなんです。ましてプロの世界では、一度勝てた戦略というのはどんどん分析されていくので、自分自身を常に変化させていかざるを得ません。

 一軒家を建ててはいけないというか、このやり方で勝てるという戦い方ができたとしても、そこから身を移す心構えがないと、すぐに置いていかれて勝てなくなってしまいます。

phot
2016年東京ゲームショウで開催された国際大会 にて(Yusuke Kashiwazaki/Red Bull Content Pool)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る