“286連勝”したプロゲーマー「ウメハラ」が明かす勝負哲学――高く飛ぶためには深くしゃがめ:梅原大吾が提示する「新しい仕事」【後編】(4/7 ページ)
プロゲーマー「ウメハラ」こと梅原大吾の勝負哲学とは――。そして現在の日本人の働き方をどのように捉えているのか。ITmediaビジネスオンラインに語った。
リミッターが外れる感覚
――「一度地下に潜る」といいますが、これがなかなか難しい気がします。
もちろん、多くの人が周りの目や批判に耐えられないのは分かるし、自分自身も嫌です。でもそれに耐えないと、いつまでもその日その日の勝った負けたを繰り返して、ずっと苦しい思いをし続けることになります。やはりどこかで、そういった「今あるものを手放す覚悟」を持って、自分が本当にやるべきだと思っていることに取り組む必要があるのかなと思っています。
これは自分自身にもいえることなのですが、人ってピンチになると「火事場の馬鹿力」が出るって言うじゃないですか。普段は本当の全力が出せないようにリミッターがかかっている。これは普段の取り組みにも言えるんじゃないかと思うんですよね。
自分ではどんなに真剣に取り組んでいるつもりでも、やはりどこかでリミッターがかかっているんですよ。これ以上は取り組まない、これ以上はやらないという常識のラインがあります。でも、自分の場合は格闘ゲームにおいて「この勝負は負けられない」と思ったときに、リミッターが外れる感覚があるんです。すると、対戦中にもかかわらず、今まで考えつかなかったような発想やアイデアが湧いてくることがあります。
――なるほど、本当に自分自身の能力を引き出したいと思ったら、自分を追い詰める必要があるということなんですね。
そういうことです。これは意識しては外せないんですよね。無意識のうちに自分の中である一定のラインを引いていて、その水準の中で精神的余裕を維持してしまっていると、必死になれずリミッターも外せないままなんですよ。
だから、現状を変えたいんだったら、高く飛びたいのだったら、一度深くしゃがむということを私はやります。今ここにいる位置から動きたかったら、一回下がる覚悟をしないと、大きく自分を変えることはできないと思いますね。自分の人生の中で数えるぐらいではありますけど、高く飛ぶために深くしゃがむっていうことをやってきた気がします。
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