「バイトは教育で真人間にしろ」が、ブラック企業につながる理由:スピン経済の歩き方(4/8 ページ)
バイトテロ騒動で、コンビニや外食産業が揺れている。こうした事態を受けて、「バイトも研修を受けさせるべきだ」といった声が出ているが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
理不尽な仕打ちに耐える理由はない
全体主義の日本では、ゆりかごから墓場まで、こういう「連帯責任」を骨の髄まで叩き込まれるので、会社に正社員として就職したような人は、誰かのミスで連帯責任を負わされても当たり前だとあきらめる。しかし、バイトという立場の人は、そこまで理不尽な仕打ちに耐える理由はない。
つまり、一部の問題バイトの対策で、「全従業員強制参加」の研修が当たり前になると、「マジメなバイト」ほど損をするという状況になり、「連帯責任」に愛想を尽かして去っていく「離職ドミノ」が起きる恐れがあるのだ。
だが、バイトを研修・勉強会漬けにすることの本当の危険は(3)の『覚えることが多いバイトをさらに苦しめる』という点にある。
今回のバイトテロ報道を受け、「昔のコンビニや居酒屋でバイトでも、こういうバカは一定数いたもんだ」と遠い目をするおじさんがよくいるが、こういう人たちが働いていた時代と現在は比べ物にならないほど仕事が増えている。
サービスが多様化しているのはもちろんだが、30年前と比べて、言葉遣いや態度が悪いとクレーム、レジや食事を出すのが遅いとお説教と客側が求めるサービスの質も高くなっているのだ。企業側も大量出店したことで、バイト依存が進んでいる。接客マナーや作業マニュアルを叩き込んで、社員のようにキビキビ働くバイトを求めている。牧歌的な時代の無責任バイトと比べて、とにかく「覚えること」「守るべきこと」が山のようにあるのだ。
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