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公立中学校長が定期考査を「全廃」した理由――成績を“ある時点”で確定させることに意味はない麹町中学・工藤勇一校長の提言【中編】(1/4 ページ)

なぜ麹町中学は定期考査を全廃したのだろうか――。真相に迫る。

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編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―』(著・工藤勇一、時事通信社)の中から一部抜粋し、転載したものです。


 宿題もなく、クラス担任もなく、中間・期末試験もない――。学校の「当たり前」を見直し、メディアや教育関係者、保護者などから注目されている公立中学校が東京都にある。千代田区立麹町中学校だ。

 なぜこのような大胆な改革を進めているのだろうか。麹町中学の校長である工藤勇一氏に、3回に分けてその真意を語ってもらった。記事の前編(なぜ宿題は「無駄」なのか?――“当たり前”を見直した公立中学校長の挑戦)では、宿題を廃止した理由について語ってもらったが、今回は定期考査を廃止した背景に迫る――。

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工藤勇一氏:千代田区立麹町中学校校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学卒。山形県・東京都の中学校教諭、新宿区教育委員会指導課長などを経て、2014年4月より現職。 現在は安倍首相の私的諮問機関である「教育再生実行会議」の委員をはじめ、経産省「EdTech委員」、産官学の有志が集う「教育長・校長プラットフォーム」発起人など多数の公職についている。『「目的思考」で学びが変わる—千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦 』(多田慎介著、ウェッジ)も話題に

定期考査の全廃、なぜ?

 中間・期末テストなどの定期考査の全廃も行いました。

 「麹町中で中間・期末テストをなくす」という話を聞いた他校の校長が、「工藤校長の学校、定期考査を廃止したって本当? そんなことやって大丈夫なの?」と電話をしてきました。「本当だよ」と、私が廃止の理由と狙いを説明すると、その校長は驚きながらも納得していました。

 私が定期考査をなくそうと考えたのは、宿題と同様、目的を達成するための手段として適切ではないと感じたからです。

 皆さんの中高生時代を思い返してみてください。定期考査前の1週間、日頃の遅れを取り戻すべく躍起になって勉強し、テストに出そうな部分を一夜漬けで頭にたたき込んだ記憶はありませんか。そうした定期考査前の学習パターンは、今の生徒たちも何ら変わっていません。

 一夜漬けでの学習は、「テストの点数を取る」という目的においては有効ですが、学習成果を持続的に維持する上では効果的とは言えません。テストが終わったら、かなりの部分は忘れてしまうからです。そうしたプロセスを経て獲得した点数・評価は、その生徒にとっての「瞬間最大風速」にすぎず、それをもって成績をつけたり、学力が付いていると判断することは、適切な評価とは言えません。

 さらに言えば、一夜漬けで片づける「悪癖」がつくことの弊害も小さくないと思います。

 私も大きな仕事があるのに締め切り近くまで着手せず、直前になってから「やっつけ仕事」で片づける傾向がかつてはありました。言い訳をするようですが、こうした習慣も中高生時代の定期考査対策を通じて身に付いたものではないかと思うことがあります。教員の多くは定期考査の「勝ち組」です。自らの成功体験を客観視して、それを否定的に見ることは難しいものです。自分がそうしてきたように、子どもたちにも成功体験を積んでほしいと思うのではないでしょうか。

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定期考査は目的を達成するための手段として適切か?(写真提供:ゲッティイメージズ)
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