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「ファーウェイ排除」が意味するもの――Googleが中国のモノづくりをS級に変えた「S級国家・中国」“超速アップグレード”の実相【後編】(1/4 ページ)

米国による「ファーウェイ排除」の背景――。Googleが、品質の悪かった中国のモノづくりをS級に変えた変遷をひも解く。

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編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『中国S級B級論――発展途上と最先端が混在する国(編著・高口康太、さくら舎)』の中から一部抜粋し、転載したものです。


 米国に次ぐ世界第二の経済体となった中国。図体の大きさだけではなく、画期的なイノベーションを生み出すなど、創造力の面でも今や世界をリードする存在だ。10年前は「遅れた途上国」だった中国が、なぜ瞬く間に「S級国家」へと変貌したのか。長年中国と関わり続けている気鋭の論者に、社会、政治、技術の各方面から分析してもらった。

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米国による「ファーウェイ排除」。Googleが中国のモノづくりを変えてきた経緯を知ることによって背景をもっと理解できる(写真提供:ロイター)

「自国製品はB級」の認識を変えた2つの政策

 「メイドインチャイナ」は品質が悪い。そう思っていたのは日本人だけではない。当の中国人自身が中国製品を信用していなかった。外国メーカーの製品のほうが、中国メーカーの製品よりはいいと考えていたわけだ。

 しかし外国メーカーの製品だったら信じられるかというと、これもまた中国人は警戒していた。当時中国人のあいだでは「メーカーは一流製品を日本へ、二流製品を欧米へ、三流製品を中国へ出荷する」といったうわさが信じられていた。中国に流通する製品は、外国メーカーの製品だろうと中国メーカーの製品だろうと、ろくでもないB級製品ばかりだと考えられていた。

 例えば東芝の電子レンジでも、中国工場で組み立てたものよりも、日本工場で組み立てたもの、日本の売り場で売られていたものが、より品質が高いと信じられていた。いまでもそうした海外信奉が消えたわけではない。海外旅行の際に、中国でも売られている品を大量に購入するのには、自国よりも外国のほうが信じられるという事情があるのだ。

 現在日本に進出している中国家電最大手の海尓集団(ハイアール)や、中国パソコン最大手の聯想集団(レノボ)ですら中国人は信じなかった。彼らはダメな製品をつかまないために、「ラインアップの中でいちばん安い製品は買わない」といった自衛策を講じていたほどだ。

 だが、当時から中国メーカーの製品を自腹で収集していた私は、「中国製品のなかにはうわさほどひどくないものもたくさんある」と感じていた。2000年代の中国人の中国製品へのB級評価は私の想像を上回っていた。中国人は口コミで失敗経験をシェアしているのだが、悪い事例ばかりが強調して伝えられる。「意外と悪くない」という書き込みなど、誰も読まないだろうから当然かもしれないが。「自国製品は全てB級」という中国人の認識をくつがえす契機となったのが、2009年におこなわれた中国版エコポイントといえる「家電下郷」と「以旧換新」という2つの政策だった。

 「家電下郷」とは、貧しい農村部で実施された政策で、認定を受けた家電製品を購入する際に補助金を支給する。「以旧換新」は都市部で実施された政策で、家電や車の買い換えに補助金を支給する。とくに都市部向けの「以旧換新」政策は、多くの都市部の人々を中国メーカーの液晶テレビ購入に踏み切らせた。

 ハイアールや創維数碼(スカイワース)などの中国の地場メーカーは、「以旧換新」という大義名分のもと、中国全土の都市で、政府認定対象製品以外も含めて液晶テレビを安く買えるキャンペーンを展開した。使用済みの旧型テレビを持っていくと、購入する薄型テレビが安く買える特設ブースが、繁華街を中心に多数設けられた。特設ブースには大きなブラウン管テレビの山ができていた。

 「家電下郷」「以旧換新」はリーマンショックで落ち込んだ消費を喚起するための政策だったのだが、思わぬ副産物を生んだ。多くの中国人が実際に製品を所有することで、「中国メーカーはうわさほどひどくない」と気づいたのだった。ポジティブな口コミも広がり、中国メーカーへの抵抗感は一気に薄れていった。

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今でも粗悪なB旧品は残っているが……
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