「ファーウェイ排除」が意味するもの――Googleが中国のモノづくりをS級に変えた:「S級国家・中国」“超速アップグレード”の実相【後編】(4/4 ページ)
米国による「ファーウェイ排除」の背景――。Googleが、品質の悪かった中国のモノづくりをS級に変えた変遷をひも解く。
アンドロイドのおかげでS級製品が拡大
ところで日本人のITウォッチャーに中国製品がB級からS級へと変わったと認知されるようになったきっかけは、アンドロイドだ。中国のスマートフォンは、Google(グーグル)が開発しているオープンソースのモバイルOSであるアンドロイドを採用している。画面の表示を日本語や英語にできるため、マニアが中国メーカー製スマートフォンを導入するようになり、シャオミなどの中国メーカーの製品を趣味仲間に伝えるようになったのだ。
アンドロイドはまた、中国製品がB級からS級に化ける大きなターニングポイントになった。後からソフトに手を加えることができるアンドロイドによって、出荷後でもスマートフォンのOSやアプリを修正したり機能を加えたりするアップデートが容易になった。
さらに、アンドロイドがスマートフォンだけでなく、スマートテレビやカーナビ、ゲーム機、街の広告用大型ディスプレイ、バーコードリーダー、カラオケショップの選曲機械など、さまざまな製品に搭載されるようになった。すると、スマートフォン以外の製品もS級クオリティーへと変わっていった。ソフト面が原因の低品質な中国製品は、アンドロイドが登場してから、目に見えて減っている。
中国は言論の自由を求めるグーグルと敵対している。そのため中国からはグーグルのサイトにアクセスできないし、中国メーカー製スマートフォンにはグーグルマップやグーグルプレイをはじめとするグーグルのアプリは存在しない。
しかし、モノづくりの面では、グーグルは中国に対し多大な影響力を発揮しているといえるだろう。アンドロイドというOSが、後から修正をしていくという製造方法にフィットし、中国のIT製品の本質を大きく変えている。
著者プロフィール
山谷剛史(やまや・たけし)
ジャーナリスト。1976年生まれ。2002年より中国雲南省を拠点に中国などアジア各国のIT事情について執筆。著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)など。
関連記事
- ユニクロはいかにして中国で勝ったのか? 「20年の粘り腰」に見る強さの源泉
2002年秋、上海に初出店し、しばらく鳴かず飛ばずだったユニクローー。なぜ中国市場で勝つことができたのだろうか? 気鋭の論者が分析する。 - 世界最強の政党「中国共産党」の実像――14億人を支配する7人
中国はいかにして「S級国家」へとのし上がったのか? 中編では「中国共産党」の権力構造に迫る。 - 「キャッシュレス大国」中国の実相――“信用経済”の深い影
「買う」「食べる」「移動する」「遊ぶ」――。全てモバイル決済で済ませる「キャッシュレス大国」中国の驚くべき実態に迫る。 - ひろゆきの提言(1)――「1人産めば1000万円支給」で少子化は解決する
ひろゆきこと西村博之氏が、令和時代を迎える日本が今後どんなふうにヤバくなるのか、沈みゆく日本で生き抜くためにはどうしたらいいのかを3回にわたって提言する。第1回目は少子化問題について――。 - ひろゆきの提言(2)――予測が難しい時代にハズさない「未来の読み方」
ひろゆきこと西村博之氏が、令和時代を迎える日本が今後どんなふうにヤバくなるのか、沈みゆく日本で生き抜くためにはどうしたらいいのかを3回にわたって提言する。第2回目は予測が難しい時代に、ハズさない「先読み」のコツ――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.