復活の兆しがある「社内運動会」は、本当に組織を活性化するのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
社内運動会を開催しているところが増えているという。「社内運動会=昭和」のイメージがあるが、どういった目的で開催しているのか。「組織を活性化するために」といった声が多いが、本当にそんなこと……。
運動会は「大人のもの」だった
1870年(明治3年)に設立された海軍士官養成所である海軍兵学寮。そこでは士官候補生たちが毎日、座学や馬術、武道訓練などに打ち込んでいたわけだが、顧問団団長を務めていた英国人、アーチボルド・ルシアス・ダグラスは、そこに大きな不安を抱いていた。いくら志の高い士官候補生といえども、そのように遊びのない日々を送っていては精神的に参ってしまい、ひいては海軍への忠誠心も薄れてしまうかもしれないからだ。
そこで思いついたのが、「スポーツ競技」を通じた気分転換。それが1874年に開催され、後に日本の運動会のルーツとされる「競闘遊戯会」だ。この歴史的事実からチコちゃんは「兵隊さんがグレないため」という結論に至ったのだ。
兵隊が「グレる」ことは、軍隊というコチコチの縦社会に逆らう、ことであることは言うまでもない。つまり、「運動会」というのは、ハードな仕事を強いられる者たちがため込んだ不満の「ガス抜き」をして、組織に命じられたことを素直に従わせることを目的とした、現代でいうところの「社内運動会」が原型だったのだ。
このような「運動会=社内運動会」を物語る事実は他にもある。運動会の発祥は「競闘遊戯会」ではなく、「これより6年早い68年、幕府の横須賀製鉄所であった企業運動会が最初という説もある」(朝日新聞 2015年5月9日)のだ。
この企業運動会は、フランス人技術者たちが企画したもので、言葉の壁もあった日本人技術者とフランス人技術者の「親睦」を図る目的だったという。有り体に言えば、「チームワーク向上」のためである。
「運動会」と聞くと、ほとんどの日本人は、子どもたちにチームで協力をすることを学ばせるとか、勝利の喜びや、負けた時の悔しさを通じて、人間として成長させるとか、さまざまな目的を思い浮かべるが、それらは全て「後付け」に過ぎない。
もともと運動会は「大人のもの」である。組織にとってありがたい「従順な組織人」を育てることを目的としたカリキュラムであって、子どもたちに炎天下の中でやらせるようなものではないのだ。
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