2015年7月27日以前の記事
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「二段階認証うんぬん」発言から読み取れる、セブンの危機的状況スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

不正アクセスの問題を受けて、7payの社長は記者からの質問に詰まってしまった。「二段階認証も知らないのか」「信じられない。それでも社長?」といった声が飛び交っていたが、メディアトレーニングを行っている筆者の窪田氏はこの会見をどのように見ているのか。

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「員数合わせ」の思想

 話が長くなるので省くが、問題のある企業には、多かれ少なかれ「員数合わせ」がある。「チャレンジ」の名目で利益をかさ上げする。品質データをちょこっとイジる。統計データを捏造(ねつぞう)する、納期に間に合わせるために手抜き工事をしてしまう。これらの不正の根っこをたどると、「とにかく数字の帳尻を合わせなくては」という組織人特有の心理が働くパターンがあるのだ。

 「数を合わせる」ことがとにかく最優先事項になるので、モラルやコンプライアンスはどこかへスコーンと飛んでいく。組織内のルールや秩序がすべての世界になってしまうので、顧客や社会がどう感じるのかなどどうでもよくなっていく。これが「想像力の欠如」である。

 つまり、24時間営業問題に端を発する一連のセブンのお粗末な対応は、無謀な作戦で拡大路線をつき進み自滅した旧日本軍と同様に、組織全体が「員数合わせ」に蝕まれている可能性があるのだ。

 「24時間営業死守」なんてのも典型的な「員数合わせ」だが、今回の7payも同様だ。既に多くの専門家が指摘しているが、消費増税やファミPay開始のスケジュールに合わせるために未熟なセキュリティになったのでは? という話もあるし、オムニ7と連携させるために既存会員の利便性を優先したのではという指摘もある。

 いずれにせよ、根っこにあるのは「内部の理論」――つまりは、組織外の人間や社会からどう思われようとも知ったこっちゃない、という「員数合わせ」が引き起こす「想像力の欠如」が見て取れるのだ。

 では、なぜセブンほどの一流企業がそのような「病」に陥ってしまうのか。あくまで筆者の個人的な考えだが、背景には「24時間営業」と「ドミナント戦略」という、ここまでセブンの根幹をなす戦略の影響ではないかと思っている。

 店を開ければ開けるほど利益が上がる。地域に集中的に出店すればするほど店舗の売り上げも上がる、というのは、人口が右肩上がりで増える社会ならではの発想である。裏を返せば、労働者も消費者も右肩上がりで増えていくことが大前提の戦略である。

 しかし、ご存じのように、日本は既に人口減少社会に転じている。総務省の統計では、2017年から18年の間に約40万人が減少した。これがどういう減り具合なのかというと、岐阜市で暮らす人々が急に忽然(こつぜん)と姿を消した、とイメージしてもらえば分かりやすい。

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